2024年4月25日(木)

Wedge REPORT

2009年6月2日

 大きな犠牲を支払って日本が生産を減らしても、その分、中国などの途上国が作るだけではないでしょうか。エネルギー効率が世界最高の日本から生産を他国に移せば移すほど、CO2の排出量は増えてしまいます。これはやはりおかしい。私たちは広報誌や会合を通じ、一生懸命組合員に説明する機会を設けているが、説明すると「そんなに大変な問題だったのか」となります。その意味で、マスコミの報道姿勢には疑問を感じています。すべてを産業界vs環境派の図式に落とし込んでしまっています。あれだけ大量の報告書を読むだけの余裕のある国民は少ない。マスコミには“翻訳”する役割をきっちり果たして欲しい。

――それでも結局選択肢(3)という結論になってしまったらどうしますか。

(神津氏)政府は、国民の意見をここまで聞いたのだから、「お墨付きを得た」ということにするのでしょうが、本当に国民は、あの大量の資料を読み込んで理解し、しっかりと議論した上で合意に至ったといえるでしょうか。太陽光発電は設置できる人は恩恵を被る部分もあるが、できない人にとっては電気料金があがるだけです。国民全体で1世帯あたり500万円の負担を背負って、失業者を大量に増やす、そのことを国民は理解できているでしょうか。

 それでも押し切って選択肢(3)となるなら、不本意だが、枠組みに参加しない国からの輸入制限など国境措置を主張するしかありません。後期高齢者医療制度にしても、裁判員制度にしても、国民に対する説明や合意取り付けが十分にないまま押し進め、あとで実行する段階で大揉めになる事態が散見されますが、この中期目標は二の舞になるのではないでしょうか。しかも、医療制度や裁判員制度は国内にクローズした話だからまだ良いが、中期目標は国際公約だから後戻りできません。そんなことになれば何のための政治かわかりません。

 

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