進化するW杯サッカーボール

戦術にどう影響する?


玉村 治 (たまむら・おさむ)  スポーツ科学ジャーナリスト、科学ジャーナリスト

小学校より野球をはじめ、大学では投手として活躍。スポーツを科学的に分析することを得意とし、バンクーバー、ロンドン五輪、ワールドカップサッカーなどで取材。

科学で斬るスポーツ

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今年最大のスポーツイベントの一つであるサッカーのワールドカップ(W杯)が6月12日(日本時間13日)からブラジルで開幕する。前回南アフリカ大会のベスト16を上回る成績を残せるか、ザックジャパンの活躍が楽しみだが、選手以外では、大会ごとに変わるボールの特性が、どう戦術に影響するかも気になるところ。前回の公式球「ジャブラニ」は、無回転になりやすく、左右に揺れる「ブレ球」はキーパー泣かせだった。今回の公式球「ブラズーカ」はどうか。ブレ球は少なくなるものの、コントロールしやすいと選手らの評判も良い。ボール進化の変遷と、特性のほか、どうプレーに影響するか紹介する。

6枚のパネルを熱圧着したブラズーカ

ブラジルW杯公式球「ブラズーカ」

 公式球は、ドイツの世界的スポーツメーカーのアディダスが、一貫して作っている。今大会のブラズーカの名前は、ブラジルで100万人以上が参加した命名キャンペーンで70%の支持を得たもの。ブラジル人が自らのことを誇らしくいう時に表現する言葉だ。ブラズーカは、W杯サッカーの歴史に刻む話題に事欠かない。

 最大の特長は、パネルの枚数が史上最小の6枚であることだ。

 複数のパネルをつなぎ合わせてつくるボールのパネル数をここまで絞り込むのは、選手にとっての使いやすさを追求したことの象徴でもある。

 日韓の共同開催となった2002年の公式球「フィーバーノヴァ」は、六角形20枚、五角形12枚の計32枚のパネルを組み合わせた。サッカーボールの象徴的なデザインで、20年間変わることはなかった。ただ、フィーバーノヴァは、それまでの天然皮革に替わり、人工皮革になった。雨天時に皮に水が染みこみ、伸びてしまうという欠点が克服されたが、手縫いでパネルを縫合するため、ムラができてしまうのが難点だった。

 この弱点を克服したのが、2006年のドイツ大会の「+チームガイスト」。革命的な変化とも言われ、パネル数を一気に14枚まで減らした。そして、縫合は手縫いから熱でプレス接合する「熱圧着」という手法に変わった。しかし、パネル表面がつるつるし過ぎ、雨天時に蹴りにくいなど不満が大きかった。

 この欠点を改善したのが前回大会の「ジャブラニ」。パネル数は8枚で、2種類のパネルを接合し、ボールに力が伝わる「スイートスポット」の面積を70%増やした。表面に接合面と異なる溝を設けて、ブレ球を軽減し、表面に小さな突起を施し、すべりにくくした。

W杯で使われた公式球。左から2002年の日韓共同開催の「フィーバーノヴァ」、ドイツW杯の「+チームガイスト」、南アW杯の「ジャブラニ」
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玉村 治(たまむら・おさむ)

スポーツ科学ジャーナリスト、科学ジャーナリスト

小学校より野球をはじめ、大学では投手として活躍。スポーツを科学的に分析することを得意とし、バンクーバー、ロンドン五輪、ワールドカップサッカーなどで取材。

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