前回はNYタイムズを例に、ウェブメディアが「コンテンツ課金」で収益確保する方策を紹介したが、今回は「ウェブ広告の収益力強化」で実績を上げている米国メディアの取り組みを紹介する。
読者を絞り込む「Quartz」の戦略
Quartz 発行人・Jay Lauf氏
「Quartzでは世界経済にフォーカスしたコンテンツを、モバイルやSNSを使いこなす“エグゼクティブ層”に向けて提供しています」(Quartz発行人・Jay Lauf氏)
月刊誌『The Atlantic』を発行する米国の老舗出版社Atlantic Mediaが2012年に立ち上げたウェブメディア「Quartz(クォーツ)」。月間ビジター数はすでに500万人を超え、その先進的な取り組みが世界中の注目を集めている。
Quartzの大きな特徴のひとつに、「オブセッション」と呼ばれる特集コーナーがある。ベテラン編集者が自ら設定したテーマを、一定期間にわたって追い続けるというものだ。オブセッションにはつねに20本前後のテーマが掲げられている。
Quartzを運営するスタッフは現在50名以上。年内には、さらに30名を雇う予定とのこと。
「テーマによって追い続ける期間は異なります。ソチ五輪のようなテーマであれば2~3週間ですし、3Dプリンタやビットコインのようなトピックではもっと短い場合もあります。逆に、ファイナンスの未来や環境問題のように、地球規模の壮大なテーマについては数年単位で追い続けることもあります」(Jay Lauf氏)
速報性はロイターの配信記事を流すことで補い、約25名いる編集スタッフは、オブセッションで設定したテーマの“深堀”に注力できる環境が整えられている。米調査会社Pew Research Centerのディレクター・Amy Mitchell氏は、「今後メディアが生き残っていくには“差別化が重要”」と指摘するが、Quartzは高度なテーマを深堀することで他の媒体との差別化を図り、質の良い読者を囲い込むことに成功している。