日本の漁業は崖っぷち

2014年6月27日

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片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社 海外担当

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『魚はどこに消えた?』(ウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

 6月12日に水産庁主催・第4回資源管理のあり方検討会が行われました。今回は、100名を超える申込者全員が出席できる広い会場に移されて開催されました。共に水産庁出身の小松正之氏(国際東アジア研究センター客員主席研究員)と佐藤力生氏(漁業者)が、参考人として呼ばれ、焦点の個別割当制度(IQ・ITQ)の是非について意見を述べました。

 小松氏は「資源と魚価が改善する」と提唱し、佐藤氏は「共同体による自主的資源管理を特徴とする日本の漁業でIQ・ITQの導入は不要」と主張し、意見が対立しました。委員の中では三重大学の勝川俊雄氏が個別割当の導入を主張する一方、他の委員からはIQ・ITQは数ある資源管理のツールの中の一つに過ぎない、IQと漁業経営の収益性の間にはプラスの関係が確認されない等と消極的な意見が出ていました。

 ここで、個別割当制度に消極的な方々に問いたいことがあります。自主管理によって、政府が掲げる「水産日本の復活」ができると本気で考えているかどうかということです。キーワードは「資源管理」です。水産日本を復活させ、資源の維持増大の実現を模索することが、この検討会の主題であるはずです。資源がなくなれば、消費も流通もありません。資源を悪化させるだけの不毛な先延ばし議論を続け、後になって漁業者を苦しめていたことがわかっても時計の針はもとに戻せないのです。

間違った情報から正しい答えは得られない

 スポーツの世界では大負けが続くチームの監督やコーチは、ファンから厳しい批判を受けることでしょう。会社組織においては、他企業と比較して大赤字を出し続ける経営者を株主は許しません。しかし、自主管理に基づく日本の漁業の世界は、資源が減り続け、これだけ漁業者や地方が疲弊しているにもかかわらず、問題が先送りされています。これは非常に無責任でおかしな事態です。

 筆者は衰退が続く原因は、漁業者ではなく、正しい情報、否、間違った情報を発信している情報源にあると思っています。

図1 世界と日本の水産物生産量(出所:週刊エコノミスト) 拡大画像表示

 これまで、日本が世界から悲惨なほどかけ離れてしまっている明らかなデータ(例:第18回参照)を数多く、これでもかというほど出してきました。日本と世界の60年間の水揚げ推移(図1参照)を一つ図に載せるだけで、「なぜ日本はこんなに酷いことになっているのか?」と多くの人が気づき、目から大きなウロコが落ちるのです。

 国際的な視点からすると、現在の日本の漁業は、重病の患者の方に、海外で実証済みの特効薬(個別割当制度)があるのに「現状のままで大丈夫ですよ」(自主管理)と言い続けて衰弱させていると言っても過言ではありません。

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