これ以外にも、他多数で書き切れません。海外から輸入されている天然魚は、個別割当(譲渡可能漁獲枠ITQ、IVQ、IFQ)で管理されたものが実に多いのです。ノルウェーやチリで養殖されているアトランティックサーモンやトラウトのエサであるイカナゴやカタクチイワシも、しっかり個別割当で資源管理されています。個別割当の普及が遅れ、天然魚の資源が懸念されている地域は、主に日本、中国を含むアジア海域で漁獲されているカツオ、マグロなどの魚です。
前述の両氏の話が根本的に異なるのは、小松氏は、成長を続ける欧米・オセアニアをはじめ、まだ管理ができていないアジア諸国含め、幅広く実際に行かれて国際的な最新の情報を得られているのに対し、佐藤氏は、日本の漁業をベースに話をされているという点にある気がします。
「できるだけ魚をたくさん獲りたい」と漁業者が考えるのは当然のことです。その漁業者が合意形成し自主的に決める数量は、持続的な資源を維持できる数量よりも多く設定されてしまうというのも自然な流れでしょう。お金をたくさん使いたい子供たち(誰でも普通そうであり、漁業者も含まれます)に、自主的に合意形成させて設定されたお小遣い金額は、果たして親の家計に負担をかけないような金額になるのでしょうか? 自主的管理というよりむしろ放任という言葉が適切ではないでしょうか?
サバの個別割当を実験的に
今秋のマサバ太平洋系群(北海道~千葉県にかけて主に漁獲されるマサバ)を漁獲する一部の漁船を対象に試験的なIQ方式に着手し、データを収集する方向性を水産庁は示してしています。
ここで、実際の管理で気を付けねばならない基本的なポイントの一部を列記しておきましょう。尚、個別割当の数量が漁獲実績より大幅に多い自主管理で行われた(表2)ものは、個別割当の数量のノルウェーサバの個別割当とは全く異なるものであり、これは個別割当(IQ)と呼べるものではありません。また、北部太平洋では、自主管理によってではなく、東日本大震災により漁獲圧力が減り、サバ、マダラ等の資源が増えていると考えられることを強調しておきます。水産庁が提供した資料である表2を見るとはっきりわかります。マサバの産卵期前後の2011年3~6月は震災と放射性物質の検体検査のためほとんど水揚げがなく、漁獲を逃れたサバがたくさんいて、それらのサバが生き残って産卵し、資源が増えていると考えられるのです。