経済の常識 VS 政策の非常識

2014年8月7日

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 人手不足で大変だという議論がある。このままでは成長が止まってしまう。深夜営業ができなくて大都市間の国際競争に勝てない、福島第一原発事故収束、震災復興、東京オリンピックのための工事もできないなどという議論がある。

 考えてみると、1960年代末、80年代末にも人手不足で大変だという議論があった。

 60年代末の議論は、賃金が高騰して国際競争力が低下し、成長ができなくなるというものだった。そのころ私は学生だったが、奇妙な議論だと思ったものだ。成長の目的は豊かになることだ。賃金が高騰するとは豊かになるということだ。目的が達成できたのだから、良いではないか、なぜ人手不足が問題なのかと思った。賃金が先進国並みになる前にもう成長ができなくなるのなら困ったことだが、先進国に学んで高い賃金になるまで頑張れば良い。

 80年代末、人手不足で若者は企業からちやほやされて楽しかった。若者の親たちも子供の就職状況が良くて喜んでいたはずである。もちろん、その好景気がバブルだったから後で困った訳だが、景気が本当に良くて人手不足なら、人を採らなくてはならない社長以外の人々には良いことだ。

 日本人のほとんどは、他人に雇われているサラリーマンなのだから、なにも社長の立場で考えることはない。社長の立場で考えても、人手が欲しいのはモノが売れているからである。売れるから人手不足になるので、売れないよりもずっと良いではないか。

 さて、今回の人手不足である。もっとも、まだまだ急に言われ出したことで、60年代末や80年代末に比べても、人手不足になって日が浅く、賃金高騰の程度もわずかである。

 図は、リクルートジョブズ「アルバイト・パート募集時平均時給調査」の結果を見たものである。この調査は、販売・サービス系、フード系(飲食店)、製造系などの職種ごと、首都圏、東海、関西の都市圏ごとのデータがあるが、図では3大都市圏の全職種全体(平均)の動きを見ている。

(出所)リクルートジョブズ「アルバイト・パート募集時平均時給調査」  拡大画像表示

 時給が高騰していると言われているのだが、一番低かった2011年4月の935円から14年4月の947円に「高騰」しているに過ぎない。金額にして12円、率にして1.3%に過ぎない。全体でなく、職種ごとに見ても高騰はわずかである。人手不足が喧伝されるフード系でも、一番低かった11年4月の円から14年4月の926円に33円「高騰」しているに過ぎない。この程度の上昇を高騰というのは日本語の使い方の誤りである。

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