2024年4月26日(金)

経済の常識 VS 政策の非常識

2014年8月7日

 時給は1000円以下に過ぎず、これが本当に高騰して時給1500円になっても、年に2000時間働いて年収300万円にしかならない。しかも、保険も年金もついていない。この程度のことで賃金が高騰して大変だというのはおかしい。

東京・渋谷においてファーストフード店員などが行った時給引き上げを求めるデモの様子(AFLO)

 人手不足になって賃金がわずかでも高くなったのは、今まで不本意ながら、他に働くところがなく、安い賃金で働いていた人が、より高い賃金を提示してくれる企業が現れたので、そこに移ったからだ。より高い賃金を提示できる企業は生産性の高い企業、低い賃金しか出せない企業は生産性の低い企業である。労働者が、生産性の低い企業から生産性の高い企業に移れば、経済全体の平均の生産性は上昇する。

 また、賃金が上がるので、今まで働いていなかった人々も働き出す。すなわち、より多くの人が働くことでGDPが増大する。

 さらに、一般に人手不足は、労働条件の悪いところで起きている。そこの賃金が上がるのは、今まで賃金の低かった人たちの賃金が上がるということである。これは所得分配を平等にする。

 すなわち、生産性が上がるか、働く人が増えて生産物が増えるか、所得分配がより平等になるか、いずれか、あるいはすべてが同時に起きている。いずれにしろ、良いことである。

 これまで大量の人材プールから人を採って使い捨てにしていた企業も、人を育てることを考えざるを得なくなる。企業の要求についていける人間だけを選び出すのではなく、無茶な要求を止めて、人材を育て、生産性を上げることを考えざるを得なくなる。多くの企業が、非正規社員を正社員化し、人材教育を施し、生産性を高めようとしている。これも良いことである。


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