世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年7月11日

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 米ニューヨーク大学対話センター長のムスタファ・トリーリ(Mustapha Tlili)が、6月3日付ニューヨークタイムズ紙掲載の論説で、イスラムへの幻想を捨て、エジプトのシシ政権との関係を築くことが米国の国益に適う、と論じています。

 すなわち、オバマ大統領は、2009年6月4日のカイロ演説において、「権力は、力によってではなく、合意によって維持されるべきものだ。少数派の権利を尊重し、寛容と妥協の精神に基づき協力しなければならない。関係者の利益よりも、国民の利益、また政治プロセスを正しく行なうことを優先しなければならない。以上の要件が伴わなければ、選挙を行なうだけでは真の民主主義を達成することはできない」と述べた。

 カイロ演説の後、エジプトは「アラブの春」を経験し、続いて、ムスリム同胞団が選挙を経て権力の座に就き、失脚した。もし2009年の演説でのオバマ大統領のメッセージが、失脚前のモルシ大統領に再び強く伝えられていれば、カイロ演説後にアラブ社会やイスラム社会が抱いた期待が、これほど裏切られることはなかったであろう。

 遺憾なことに、在任中のモルシ大統領は、オバマ大統領が挙げた「民主主義実現のための要件」を無視した。彼は、新憲法を強行に通過させ、大統領権限を強化し、コプト教徒を保護する政策を行なわず、ジャーナリストや活動家に対する復讐を行ない、非イスラム勢力の政治生命を奪おうとした。モルシ政権は、国民を犠牲にして、ムスリム同胞団の政治目標を達成しようとしたが、米国務省の報道官は、モルシ政権に絶大な権力を与えた2012年11月の新憲法制定について聞かれた際、「これはエジプトの内政問題だ」と答え、米政府は、エジプトで選挙が実施されたことで充分であるかのような態度をとった。

 オバマ政権は、チュニジアでも、非イスラム教の政治家の暗殺に関わったとされる過激派との関係が疑われていた、イスラム政党アンナハダ主導の暫定政権に対して、同様の誤った態度をとった。アンナハダの党首、ラシド・ガンヌーシは、2011年にチュニジアに帰国するまでの間、ロンドンやワシントンにおいては「イスラム教民主主義者」、或いは、穏健派として歓迎されていた。

 オバマ政権がそれらの政権を思慮なく支持してきたのは、イスラム復興主義の本質を把握できていなかったことに起因する。アラブ世界で独裁政権が数十年間続いてきた中で、イスラム復興主義者は、西側諸国に対して、自分たちをイスラム教と民主主義との妥協点を見いだそうとする穏健な組織として売り込んできた。実際には、彼らは、神の意志を地上で実行するという教義に基づく救世主的イデオロギーを提唱する人々である。彼らが米国のパートナーとなるのは不可能であろう。

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