TBS金曜ドラマ「家族狩り」
松雪泰子がたどり着く悲劇の果てとは

天童荒太の長編に挑む脚本・大石静、泉澤陽子


田部康喜 (たべ・こうき)  東日本国際大学客員教授

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

田部康喜のTV読本

月刊WEDGEに2008年6月号まで約10年間、110回にわたって連載したコラム「読むテレビ」が、インフィニティで復活します。 コラムを読んでくださった方が、そのテレビ番組を見なくても番組について語れるようになる、というコンセプトは変わりません。大きな転換期にさしかかっているテレビ界。スマートフォンやスマートパッドの登場によって、映像コンテンツの価値はより高まっていると思います。ぜひご覧いただきたい番組をご紹介してまいります。掲載回数は月に2回で、第1・第3水曜日にアップ予定です。

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「これは無理心中なんかじゃあない。誰かが家族を狩っているんだ。家族狩りだよ」

 警視庁捜査一課の馬見原光毅(まみはら・こうき、遠藤憲一)は、世田谷の民家で、祖父と父母そして息子が死んでいる現場に踏み込んで、部下の椎村栄作(平岡祐太)に向かってつぶやく。

 TBS金曜ドラマ「家族狩り」である。天童荒太の長編の原作は1995年の初作を、作者が2004年に大幅に加筆した。新潮文庫5巻にわたる長編である。

 原作には、フィクションでありながら、ノンフィクションを読むような現実感がある。サスペンスからコメディまで幅広い作品をてがけてきた、脚本家の大石静と泉澤陽子が映像化に挑む。

冒頭から高まるサスペンスの緊張

 第1話(7月4日)と第2話(7月11日)を観た。原作は緻密な文体と登場人物の心理描写によって、読者を飽かせることなく結末まで読ませる。「家族狩り」の事実とその犯人に行き着くのは終盤である。

 ドラマは冒頭から、一気に「家族狩り」の可能性とサスペンスの緊張感を高める。

 刑事役・馬見原役の遠藤の感情を殺した表情と、短いセリフがいい。映画やテレビドラマのヤクザや刑事役、時代劇まで幅広い活躍をしている遅咲きの俳優である。

 民家の鍵がかかった密室で、連続して家族の死体がみつかる。ドラマは赤羽の事件で始まる。この前に大森で同様の事件が起きている。そして、冒頭の世田谷である。

 現場の所轄の警察署は子どもによる一家の無理心中だと結論づけようとする。馬見原は殺人事件の可能性を追求する。

 現場に漂っていた甘い香りと化学物質のような匂いが、引っかかるのである。そして、世田谷の事件で2階の自室でベッドに突っ伏して、のど元にカッターナイフを刺して息絶えている長男の姿である。

 馬見原はつぶやく。

 「この違和感はなんなのだろう。ひどい光景だというのに。美しい……そんなバカな」

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「田部康喜のTV読本」

著者

田部康喜(たべ・こうき)

東日本国際大学客員教授

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

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