「ウナギ稚魚豊漁」報道でも
レッドリスト指定
絶滅の危機は変わらない


片野 歩 (かたの・あゆむ)  水産会社 海外担当

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『魚はどこに消えた?』(ウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

日本の漁業は崖っぷち

成長する世界の水産業の中で、取り残されてしまっている日本。潜在力はありながらも、なぜ「もうかる」仕組みが実現できないのか。海外の事例をヒントに、解決策を探る。

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かば焼きで日本人になじみが深いニホンウナギが、6月12日に国際自然保護連合(IUCN)からレッドリスト、生物の絶滅危惧種に指定されました。このニュースを耳にした方は多いと思います。

 それにもかかわらず「ウナギ、今夏は安い?」「稚魚の取引価格も今年は昨年の1/10に下がった」「稚魚豊漁、中国産値下がり」(5月21日、日本経済新聞)、「ウナギ値下がりの夏、稚魚豊漁1~2割安く」(6月10日、読売新聞)、「ウナギ一転値下がり」「卸値1~2割安 稚魚の豊漁を受け」(6月10日、日本経済新聞)、「ウナギ取引価格下落 強まる余剰感」(7月3日、日本経済新聞)など、今年のウナギの稚魚が豊漁で価格が下がる記事が目立ちました。

 「ウナギが減った」という危機は去ったのか? レッドリストに載ったのに「豊漁」とは、一体どうなっているのでしょうか? 「日本はウナギの資源管理をしっかりしているのに、ウナギがレッドリストとは何事か!」と思う方も多いかと思います。

レッドリスト指定も法的拘束力はなし

 ニホンウナギの資源状態は、同じく絶滅危惧種に指定されている「パンダ」や「トキ」と同じランク(EN:近い将来における野生での絶滅の危険性が高い種)です。「今年はパンダがたくさん見つかり、多くの動物園に届けられ、子供たちは大喜びです」とか「今年はトキが多くみられるようになりましたので、珍しい鳥が食べられると各地で好評です」と言われれば「何を馬鹿なことを!」となるでしょうが、同じレッドリストのニホンウナギが「今年は豊漁・安い」と言われても、疑問を抱かない人が多い。本当は何か変だと気づくべきです。

 ウナギもパンダやトキと同様に、急に資源が回復して増えるような状態ではありません。だからレッドリストに掲載され、保護しなければならないという世界の目が向けられるのです。

 ただし、レッドリストで絶滅危惧種に指定されても法的な拘束力はなく、すぐに捕獲禁止や売買規制にはなりません。しかしながら2016年に開かれるワシントン条約で保護対象となれば輸出入が規制される可能性があります。IUCNの判断は、絶滅の恐れがある野生動物の取引を規制するワシントン条約の対象を決める際の有力な科学的根拠となります。IUCNは1948年に設立されたNGOで、世界最大の国際自然保護機関です。181カ国で約1万人(2012年)の科学者や専門家で組織されています。

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「日本の漁業は崖っぷち」

著者

片野 歩(かたの・あゆむ)

水産会社 海外担当

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『魚はどこに消えた?』(ウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

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