日本の漁業は崖っぷち

2014年7月18日

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片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社 海外担当

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『魚はどこに消えた?』(ウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

過去最低の漁獲量で価格高騰の2013年と比較

 養殖のウナギは、稚魚であるシラスウナギを漁獲してそれを育てて出荷しています。そのウナギの稚魚は下のグラフで見ると、1960年代には国内漁獲量が200トンを超えていた年もありましたがどんどん減り続け、2013年には僅か5トンと過去最低となり、激減しているのが一目瞭然です。

今年のウナギの稚魚の漁獲量は、最終的に2013年の5トンから16トンになったとされる。前年比で大幅に増加しているが、この数字でも1960年代に200トン獲れていた頃の1/10以下に過ぎない。
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 今回のウナギ稚魚豊漁報道問題のポイントは、このグラフの見方にあります。2013年のシラスウナギ(ウナギの稚魚)の漁獲量は5.2トンと過去最低でした。このため、魚価が暴騰し、キロ250万円前後と信じられないような価格になったのです。その数量・価格と比較すれば、今年は「豊漁」「価格下落」とその通りになのですが、水揚数量である分母が既に非常に小さくなった後のものなので、前年と比較しても増加の割合が大きくなりすぎて、意味がありません。急速に右肩下がりに減少している水揚げ数量の、どの期間を捉えるかで大きく印象が変わって伝わってしまうのです。

シラスウナギ(ウナギの稚魚) (提供:毎日新聞)

 ウナギは産卵する成魚に成長するまでに5~10年と言われています。ニシン(第3回参照)、ハタハタ(第12回参照)、クロマグロ(第13回参照)など、ウナギ以外の魚種についても一事が万事なのですが、単純に前年との比較ではなく、最低でも20~30年以上のスパンで資源量の推移を見ないと、実際の資源量と傾向は分かりません。

 ウナギの稚魚の大幅な減少によって、ウナギの価格が暴騰し売り場が縮小していました。狭まった市場に、供給が増加すれば、絶対数量が少なくても、前年比で何倍という供給過剰の状態になり、市場価格が一時的に下落という現象が起きるのです。しかし、実効性のある手が打たれていないために、数年以内に再びウナギの稚魚がやはりいなかったという騒ぎになるはずです。

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