2024年4月27日(土)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2014年7月30日

輸出力向上に抜本対応を

 世界経済の回復が今後の輸出伸長要因としても、日本の輸出には大きな課題がある。それは、輸出を大きく抑制している図表2の「その他要因」にある。ここには、日本の製造業がリーマンショック後の超円高期を通じて競争力を失ったり、空洞化したりした影響などが含まれている。

 実際、リーマンショック後の主要業種別の輸出数量の推移を見てみると、とりわけ日本の主力輸出産業である自動車などの輸出数量は大幅に低下しており、円高が修正された現在になっても大して回復していない(図表4)。

 業績好調な自動車産業で輸出が回復しない背景には、海外需要に海外生産で対応しており、円安になっても日本からの輸出が増えないことがある。一方、家電産業や携帯電話などの通信機器産業は12年までの超円高期も経て国際競争力を減じた影響が大きい。

 これら海外生産への移行や国際競争力低下などは、円安ですぐに解消されることにはならない。輸出を増やすには、引き続き国内の輸出企業を取り巻く経営環境を改善するとともに、産業競争力を高める手立てを尽くすなどあらゆる手段の活用が求められている。

 それは、例えば主要国と遜色ない規制、税制・税率などの整備である。この点で、法人税減税や原発再稼働などで高騰するエネルギー価格を安定させることなどは大きなプラス要因となる。

 また、円相場の大きな変動は決して輸出にプラスにならず、安定した為替相場の維持も不可欠である。輸出が経済成長を安定的に支えているドイツを見ても、通貨変動がないユーロ圏を形成していることは大きなプラスとなっている。加えて、域外貿易でも通貨の安定が大きく寄与している。


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