2024年12月21日(土)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2014年7月30日

 安倍政権の登場以来、アベノミクス第1の矢「大胆な金融緩和」もあって円高は大幅に修正された。しかし、円ドル相場が11年10月に付けた戦後最高値75円台から3割以上の大幅円安になっているのに、11年10月から14年6月までの輸出は金額で7.9%増に止まり、数量では6.9%減と低迷している。

 ところが、この大幅円安と輸出不振も、世界各国の輸出数量の推移と比較し、円安効果を要因分析すると、定説とは異なる結果が見えてくる。世界の中で見れば、日本の輸出は相対的には伸びており、しかも円安が輸出にもたらした効果は2000年以降で最も大きいと分析されるのである。そして、輸出が低調なのは、円安が効かないからではなく、世界経済低迷や空洞化などの影響が大きいということになる。

 この結果を踏まえると、世界経済が緩やかながらも回復を続けていることから、今後日本の輸出は増加基調を辿ることとなろう。今後の課題は、空洞化した製造業分野の輸出を、新たな産業や輸出競争力強化で補えるかにある。

輸出数量への円安効果は大きい

 従来の円安期と比べると日本の輸出は伸びていない。しかし、主要国の輸出も大して伸びておらず、日本の輸出の伸びは相対的に大きい。

 現に、国毎の為替変動や物価格差などの影響を除いた輸出数量(国際収支ベースの財・サービス輸出)を見ると、日本の伸びは世界合計および他の主要国を上回っている(図表1)。この輸出数量には輸送・通信などのサービス輸出も含まれているが、財輸出だけに絞っても傾向はほぼ同じである。


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