6月13日、中国中央テレビ局は習近平国家主席が中央財経領導小組(領導チーム)の組長として会議を主宰したことを報じた。「小組」とは、共産党中枢部において各領域別の仕事を指導するための非公式な意思決定機関、というものであるが、中央財経領導小組というのは当然、党内において国の経済政策を決定するための指導チームであり、経済運営の事実上の司令塔なのである。
この中央財経領導小組はもちろん以前から存在しているものであるが、江沢民政権時代の1992年以来、国務院総理、すなわち中国の総理大臣がその組長を務めるのが慣例となっていた。たとえば今の李克強総理の前任の温家宝前総理、そしてその前任の朱鎔基元総理は総理在任中にずっと中央財経領導小組の組長を兼任していた。その際、政治局常務委員でもある国務院総理は当然、国の経済運営の最高責任者と見なされていたのである。
習主席「中央財経領導組長」就任の怪
しかし、前述の6月13日の中央テレビ局の報道によって、中国国民は初めて、党の総書記であり国家主席の習近平氏が総理の李克強氏に取って代わって、中央財経領導小組の組長に新任したことを知らされた。今まで20年以上も続いた慣例を破った異例の出来事である。
習主席は一体なぜ、この時期になって経済政策の最高責任者の役割を引き受けたのだろうか。国内外の一部のマスコミや専門家は、それを習主席への権力の集中、すなわち習主席による全権の掌握が進んでいることの証拠だと見なしているが、果たしてそうなのであろうか。
この問題を考えるにはまず一度、今の中国経済が一体どういう状況であるかを見てみる必要があろう。習主席が今後、自らの指導的責任において引き受けようとしている肝心の中国経済。実はそれを考えてみると、習氏の権力の掌握というよりもむしろ大変深刻な問題を引き受けたのではないかと思いたくなる。というのも、まさに今この時期において、中国経済は生死の正念場を迎えているからである。
破滅へ向かう中国経済の現状
一つ注目すべき動きとしては、前述の中央財経領導小組が開催される1カ月前の今年5月から、私のコラムでかねてから指摘してきた不動産市場の崩壊が確実に進んでいることが挙げられる。