まさにこのような経済衰退の惨憺たる未来を見越して、著名経済学者の許小年教授は5月21日、多くの国内起業家に対して「中国経済の長い厳冬に備えよう」と勧めた。台湾出身の名物経済学者の郎咸平氏も同27日、「中国経済は既に長期的不況に入った」と喝破した。
どうやら中国経済は陽春の去る5月からすでに厳しい冬の時代に突入しているようだが、この厳冬の先には「春」がやってくるような気配もまったく見えない。むしろ、破滅的結末へと確実に向かっているようである。
火中の栗を拾わされた習主席
中国経済の置かれている現状を考えると、まさに今という時期において慣例を破って中央財経領導小組の組長に就任した習主席の行動は、少なくとも彼自身にとっては、まさに火中の栗を拾うような愚行であることがよく分かる。どう考えても今から破綻していくであろう中国経済の運営を、彼は最高責任者として自ら引き受けたわけである。今後、経済破綻の責任問題が彼自身にふりかかってくることは火を見るより明らかであり、権力を掌握するどころかむしろ、彼自身の権威失墜と権力基盤の弱体化に繋がるに違いない。
しかしそれでも彼は一体なぜ、本来ならならなくてもよいはずの中央財経領導小組の組長に自らなってしまったのだろうか。
習主席自身がどうしてこのような判断を下したかは今でも不明であるが、彼の下したこの判断に大いに助けられた一人の人物がいる。そう、現役の国務院総理の李克強氏である。本来なら、この李氏こそが国の経済運営の最高責任者として中央財経領導小組の組長に就任すべき人物であり、彼こそ今後における中国経済破綻の責任を一身に背負っていかなければならないはずだった。しかし習主席が自ら貧乏くじを引くような形で経済運営の最高責任者の役割を引き受け、李総理は責任を負わずにして逃げることが出来たのである。
おそらく李氏の腹積もりとしては、今後は経済運営の最高責任を習主席に負わせたまま、自分が何とか国務院総理の責務を一期限り果たした後、4年後に開催予定の全国人民代表大会で総理の職を辞して、総理よりも序列が上の次期全国人民大会委員長の「名誉職」に昇進する魂胆であろう。そうすると、中国経済が破綻しようがしまいが、彼は無傷のまま自らの地位を守り通すことが出来るのである。
もちろんその場合、政治的地位が守られるのは李克強氏という個人だけではない。実はそれは、李氏自身が所属する党内最大派閥の共青団派(共産党主義青年団派)の政治勢力の保持にとっても大変重要なことである。