共青団派というのは、共産党元総書記の胡錦濤氏がその在任中に、自らの出身母体である共産主義青年団から幹部を大量に抜擢して作り上げた派閥であるが、胡氏が退任した今でも、この派閥は党と政府の中で大きな勢力を擁している。
とくに今の共産党政治局には汪洋氏(国務院副総理)、孫政才氏(天津市党委員会書記)、胡春華氏(広東省党委員会書記)などの50代そこそこの共青団派若手幹部が控えている。そして2017年開催予定の次期党大会で今の政治局常務委員の大半が年齢制限によって一斉に退陣した後、彼ら共青団派の若手が一挙に政治局常務委員会入りを果たして最高指導部を掌握する構えである。
それこそが共青団派による次期政権戦略であるが、それを達成するためには、現政権における共青団派の代表的人物である国務院総理の李克強氏が無傷のまま総理職を全うことが前提条件である。逆に大きな失敗を犯して責任を問われるようなこととなれば、共青団派の次期政権戦略が狂ってしまう可能性は大であろう。
だとすれば、国務院総理としての李氏ではなく、習主席自身が経済運営の最高責任を負って例の中央財経領導小組の組長に就任したことは、共青団派にとってむしろ大変都合の良いことなのである。彼らはそれで、胸を撫で下ろしたはずである。
そうすると、考えられる可能性の一つとしては、李氏とその所属の共青団派は何らかの「謀略」をもって、習主席が例の組長に就任するよう仕向けた、ということもあり得るのであろう。そうすることによって李氏自身と共青団の保身を図れたのと同時に、経済破綻の責任を習主席に投げつけることによってライバル派閥の太子党の力を削ぐこともできるはずだ。つまりそれは、共青団にとって一石二鳥となるのである。
逆に習主席自身の立場からすれば、中央財経領導小組の組長就任という愚行は、将来においては自らの墓穴を掘ることになるのかもしれない。どうやら習近平氏は、知らず知らずのうちに窮地へと追い詰められているようだ。
習政権を乗っ取る?強硬派軍人の存在
このようにして、今の習主席は共青団派に嵌められたような形で窮地へと追い詰められているような様子であるが、実は別の方面からも彼の指導権を侵食するような動きも見えてきている。それは、解放軍である。
話をもう一度、冒頭で紹介した中央財経領導小組の会議に戻そう。6月13日に中央テレビ局がこの会議の開催を報じたことは前述の通りだが、実は大変奇妙なことに、当日の中央テレビ局ニュースも翌日の人民日報の関連ニュースも一切、小組の構成メンバーの名簿を公表しなかった。