2024年11月21日(木)

経済の常識 VS 政策の非常識

2014年8月18日

 成長戦略では、人口を1億人に維持することが目標とされている。もちろん、それを移民で実現すると言っている訳ではない。だが、海外からの労働者なしに、労働力人口を維持することは不可能だろう。

経済連携協定に基づいて来日したフィリピン人の看護士助手(JIJI)

 多くの国の経験から言えば、労働者として来ても、いずれその国に定住することになるのが通常である。定住すれば、それは移民とたいして変わらない。

 移民が移住国の利益になるかどうかは多くの研究があるが、結論ははっきりしない。移住国の利益になるような高度な移民に来てもらえれば利益になるという、ほとんど同義反復に近い結論しか得られていないようだ(萩原里紗・中島隆信「人口減少下における望ましい移民政策」経済産業研究所ディスカッションペーパー)。

 そこで、高度移民を取り込もうという政策が打ち出されているのだが、そのような人材は、すでに各国の取り合いになっているので、そううまい具合に日本には来てくれない。

 考えてみると、コストをかけずに高度な移民の流入で利益を得るチャンスがあった。ナチスがユダヤ人を迫害した時である。多くのユダヤ人が日本にも逃れてきた。普通の日本人は、この人々に同情的であったが、高度移民として遇しようと考えたエリートはいなかった。

 一方、米国は、これこそが高度移民だと認識した。当時、米国は経済・軍事・政治大国ではあったが、知的、文化的には二流国だった。科学と文化の中心はドイツだった。ナチスに追われたユダヤ系の学者たちが米国に来ることで、米国の知の水準は一挙に高まった。


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