韓国の「読み方」

2014年8月1日

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伊藤弘太郎 (いとう・こうたろう)

キヤノングローバル戦略研究所研究員

2001年中央大学総合政策学部卒業、04年同大学大学院総合政策研究科博士前期課程を修了。衆議院議員事務所(秘書)、公益財団法人日本国際交流センター(アシスタント・プログラム・オフィサー)、独立行政法人経済産業研究所(リサーチ・アシスタント)、韓国・高麗大学一民国際関係研究院(ジュニア・リサーチ・フェロー)を経て、10年より現職。
 

事故を巡るメディア報道と
「安全」を求める国民の声

 今回の韓国メディアによるセウォル号沈没事故関連報道には際立った特徴がある。それは「社会の安全をいかに構築するか」、「国民の安全意識をどのように向上させるか」という視点だ。後述するように、北朝鮮に対する脅威は低下しつつある一方、事故や災害に対する「安全」意識が高まっている。

 事故発生直後から有力紙では「韓国社会の安全総点検」に焦点を当て、災害時の政府対応を検証する記事が並んだ。例えば、4月29日付中央日報(日本語版)の記事は、「安保(安全保障)に使われる国防予算約34兆ウォンと安全(災害対策)に使われる予算約1兆ウォン」に大きな差があることを指摘し、「政府は冷戦時代の安保志向から脱却し国民の安全のために予算を割くべきだ」と主張するなど、事故発生後の早い段階から今回の事故の問題点を総括し、各省庁の災害対応業務を統括する新しい省庁の創設の必要性を主張する記事が各紙に掲載された。韓国政府側もこれに呼応するかのように「国家安全処」創設の検討を始めた。

 こうした動きは、旅客船沈没事故直後の5月2日夕方ラッシュ時にソウルの地下鉄で列車衝突事故が発生するなど、韓国国内で国民の安全を脅かす大規模火災や事故が多発したこともあり、一層加速されたようだ。

 事故から約1カ月が経過した5月20日、朴槿恵大統領は対国民談話の場で涙を流しながら、犠牲者への哀悼の意を表するとともに、「国家総改造」の一環として今回最も厳しく批判された海洋警察庁の解体を発表した。その後、同大統領は「テロ等はNSC(国家安全保障会議)が対応し、災害については新設する国家安全処が管轄するが、関連省庁が災害発生時にしっかりと連携をとらない場合は該当官庁の長官を懲戒する」方針を示した。

焼香所を弔問した朴大統領に家族が詰め寄る場面も
(写真:Yonhap/アフロ)

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