僅か5年で輸出額10倍に
急伸する韓国の防衛産業


伊藤弘太郎 (いとう・こうたろう)  キヤノングローバル戦略研究所研究員

2001年中央大学総合政策学部卒業、04年同大学大学院総合政策研究科博士前期課程を修了。衆議院議員事務所(秘書)、公益財団法人日本国際交流センター(アシスタント・プログラム・オフィサー)、独立行政法人経済産業研究所(リサーチ・アシスタント)、韓国・高麗大学一民国際関係研究院(ジュニア・リサーチ・フェロー)を経て、10年より現職。
 

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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韓国防衛産業による防衛装備品の輸出が近年急激に増加している。2006年には約2.5億ドルの輸出額であったが、現在は約10倍にまで成長した。こうした動きには中国も警戒感を露わにする。韓国の安全保障事情に精通する筆者が、同国武器輸出の歴史を紐解き、急伸した背景や要因を分析する。

 今年9月10日、韓国・慶尚南道(キョンサンナムド)にある空軍基地から、尾翼にインドネシア国旗が付いた2機のジェット機が離陸した。同国初の国産ジェット超音速練習機であるT−50が、発注元のインドネシアへの引き渡しのため飛び立つ瞬間であった。同機については、2011年5月に韓国航空宇宙産業とインドネシア国防省との間で16機の購入契約が成立しており、発注額は1機当たり約2500万ドル、総額約4億ドルと言われている。

中国も警戒する
韓国の動き

韓国初の国産ジェット超音波練習機「T-50」
(提供・AFP=時事)

 T−50のフライトから約1カ月後の10月12日、韓国の朴槿恵(パククネ)大統領は国賓としてインドネシアを訪問し、ユドヨノ大統領との首脳会談を行った。この会談で防衛産業など両国間の産業協力関係が発展していることを確認し、さらなる発展のため包括的経済連携協定(CEPA)を年内に締結することに合意した。すでに両国間では、11年末に韓国の大宇造船海洋が製造する潜水艦3隻の購入契約が結ばれるなど、インドネシアは韓国防衛産業の重要な輸出先となっている。

 同月17日に朴大統領はフィリピンのアキノ大統領を国賓としてソウルに招待し、フィリピン空軍が韓国のFA−50軽戦闘機を採用したことに謝意を表明し、両国の国防分野における協力のための覚書(MOU: Memorandum of Understanding)も締結された。韓国メディアの報道によれば、両国間では現在韓国製艦艇の導入についても議論が行われているようである。

 こうした両国の動きに対して、フィリピンと南シナ海で領土問題を抱える中国は韓国に対し、フィリピンにFA−50を輸出しないよう牽制する動きがあったと報じられている。

 朴大統領は就任後2番目の訪問国として中国を選び、良好な韓中関係を世界にアピールした。その一方で韓国は、近年中国の影響力が拡大してきた東南アジアにおいて積極的に防衛装備品のセールス活動を展開してきたのである。

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伊藤弘太郎(いとう・こうたろう)

キヤノングローバル戦略研究所研究員

2001年中央大学総合政策学部卒業、04年同大学大学院総合政策研究科博士前期課程を修了。衆議院議員事務所(秘書)、公益財団法人日本国際交流センター(アシスタント・プログラム・オフィサー)、独立行政法人経済産業研究所(リサーチ・アシスタント)、韓国・高麗大学一民国際関係研究院(ジュニア・リサーチ・フェロー)を経て、10年より現職。
 

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