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2013年11月21日

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伊藤弘太郎 (いとう・こうたろう)

キヤノングローバル戦略研究所研究員

2001年中央大学総合政策学部卒業、04年同大学大学院総合政策研究科博士前期課程修了、17年同大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得満期退学。衆議院議員事務所、公益財団法人日本国際交流センター等での勤務を経て、15年1月より内閣官房国家安全保障局にて、参事官補佐として韓国を中心とする東アジア地域の政策実務に携わった後、17年7月より現職。専門は韓国の外交安全保障政策。

 防衛産業に対する国民の視線が厳しい中、当初、政府・軍は防衛装備品の海外セールスに必ずしも積極的ではなかった。しかし、世界では各国の大統領が積極的に自国の装備品を売り込んでいる現実を目の当たりにし、韓国でも意識改革が進んでいった。

 防衛装備品輸出拡大体制の整備は盧武鉉(ノムヒョン)政権発足後に具体化した。同政権は政府と防衛産業の関係を根本から改革し、防衛調達業務の透明性と公平性を確保するため、06年に国防部傘下に防衛事業庁を創設、防衛事業法を施行した。同法では、防衛産業の投資促進と輸出市場拡大のため同庁が必要な措置を取ることが定められている。

韓国防衛産業 躍進の裏側

 韓国防衛産業が躍進した要因としてまず挙げられるのは技術力と生産力の向上である。韓国は70年代に「漢江の奇跡」と呼ばれる高度経済成長を実現し、重工業を中心に発展を遂げた。これにより戦車など大型装備品の生産基盤が確立された。近年においてはサムスンやLGなど電子・IT産業が成長し、韓国ブランドが世界的に認知されるようになった。現在は現代戦に必要不可欠なITなど最先端技術を駆使した装備品の開発・生産により付加価値を高める戦略を取っている。

 第2は、政官民軍が一体となって装備品輸出プロジェクトを進めている点である。防衛事業庁、防衛産業振興会、防衛産業各社が一体となって、市場開拓団を組織し、世界各国、特に新興国や発展途上国に対する市場調査を行った上で海外セールスを行っている。

 具体的には、各国が置かれている安全保障環境や国防予算、財政状況、装備品の状況を精査した上で、外交部の支援を受けつつ関係者が合同で各国に出向き、相手国が必要とする装備品や財政状況について親身に意見聴取した後、自国の装備品を紹介している。

 相手国が受注に関心を示して具体的契約の可能性が見えてくれば、最後の一押しは大統領訪問による直談判となる。近年の防衛装備品輸出額増加は李明博(イミョンパク)前大統領自身のトップ・セールスによるものが大きいと考えられる。

 一方で水面下では情報機関の関与も垣間見える。前述のインドネシアへのT−50売却交渉の最終段階であった11年2月、ソウルを訪問したインドネシア特使団が宿泊するホテルの一室に、韓国の情報機関である国家情報院の要員3人が侵入したところを、同特使団に発見される事案が発生している。

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