Wedge REPORT

2013年11月21日

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伊藤弘太郎 (いとう・こうたろう)

キヤノングローバル戦略研究所研究員

2001年中央大学総合政策学部卒業、04年同大学大学院総合政策研究科博士前期課程修了、17年同大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得満期退学。衆議院議員事務所、公益財団法人日本国際交流センター等での勤務を経て、15年1月より内閣官房国家安全保障局にて、参事官補佐として韓国を中心とする東アジア地域の政策実務に携わった後、17年7月より現職。専門は韓国の外交安全保障政策。

複雑な韓国の本音

 韓国は防衛装備品を積極的に外国へ売り込んで利益を上げる一方、日本の武器輸出緩和の動きに対しては警戒感を隠そうとしない。こうした韓国の姿勢に違和感を覚える読者も少なくないだろう。現在日韓関係は歴史問題等によりギクシャクしているが、将来の日本の防衛産業育成を考える上では日韓関係の視点を欠くことはできない。

 本年夏、筆者がインタビューした韓国のある安全保障専門家は、「公の場では絶対に発言できないが、私は韓国が日本と防衛装備品の共同開発を行うことが韓日関係の発展に資すると思う」と述べていた。

 防衛装備品開発で韓国が日本と協力するというアイデアが韓国側にあること自体驚きであった。10年2月には韓国防衛産業振興会代表団が日本経団連を訪問し以下の通り発言している。

 (日本経団連側からの)「日本と装備品を共同開発したいか」との質問に対しては、同会の権副会長が「将来、日本の武器輸出三原則等が緩和されることを望んでいる。韓国の武器輸出のネットワークの経験を活かせば、良い協力ができると思う」と期待を示した。(『日本経団連タイムスNo.2985』より抜粋)

 改めて後日、前述の韓国の安全保障専門家に話を聞くと、「日本が武器輸出をこれまで以上に緩和した場合、韓国の防衛産業と競合する部分があることは事実だ。他方、1国が防衛装備品の生産に関してすべての技術をカバーすることは難しい。各国とも財政的制限を抱えているので、世界の趨勢は他国と協力しながら自国の防衛産業に効率的に投資することである」と指摘し、この分野で日韓が協力することの意義を強調していた。

 韓国メディアは表向き、安倍政権が進める武器輸出制限緩和の動きに警戒感を隠さない。他方、韓国内では、日本の防衛産業が国際市場に本格的に参入することを見越して、日本との競争や技術協力など様々な選択肢につき強かに戦略を練っている可能性がある。

 日本は韓国防衛産業の躍進に単に目を奪われるのではなく、中長期的な防衛産業育成戦略を構築する必要がある。日本の安全保障戦略の中で防衛産業育成を如何に位置づけるかを考えた上で、他国との共同開発等あらゆる選択肢の中から、国益の増大を図るための最適解を見つける努力を始めるべきである。

◆WEDGE2013年12月号より








 

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