9月5日、ウクライナ政府と親露派武装勢力との間でついに停戦合意が成立した。
停戦は5月にも一度実現したが、この際は10日ほどで破られ、その後にさらに激しい戦闘が再開したことは周知の通りだ。今回の停戦が「終戦」にまでたどり着けるかどうかは未知数だが、前回と比べて大きく異なる点がある。それは、今回の停戦では親露派武装勢力をウクライナ政府が交渉相手として認め、両者間の直接交渉の結果、結ばれたものであるという点だ。
これは親露派を単なるテロリストであるとしてきた従来のウクライナ政府の立場から大きく踏み出している。親露派を交渉相手として認めるということは、彼らが主張する「ドネツク人民共和国」や「ルガンスク人民共和国」の存在も認めなければならなくなるからだ。このような状況下で停戦すれば、そのままウクライナの分裂にも繋がりかねない。
軍事援助、介入を否定するロシア
では、ウクライナのポロシェンコ政権は何故、親露派を交渉相手と認めたのだろうか。最大の要因は、敗北寸前だった親露派武装勢力が突如として勢いを盛り返し、ウクライナ政府軍を東部地域から駆逐してしまったことであろう。もちろん、それを可能にしたのはロシアからの軍事援助とロシア軍による軍事介入だ。
だが、ロシア政府はこのような事実を認めていない。ウクライナに入っているのは自発的な「義勇兵」や「休暇中」の現役兵士達だというのがロシア政府の立場である。いかにも苦しい言い訳に思われるが(たとえば戦車のような重装備を「休暇中」の兵士が持ち出せるものか?など)、理屈というものはどうとでもつく。そこで本稿では、「軍事介入否定派」の立場で書かれた記事の一部抜粋をご紹介したい。著者は『独立新聞』系の軍事専門誌『独立軍事展望』で長らく記者として活躍しているヴィクトル・リトフキン。ロシアにおける著名な軍事専門家の一人である。
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【翻訳】ヴィクトル・リトフキン「ノヴォロシアの秘密兵器」『独立軍事展望』2014年9月5日
話は西側の同僚ジャーナリストから掛かってきた電話から始まる。
「ロシアがウクライナのドネツク州とルガンスク州に部隊を派遣しているというのは本当かい?」と彼は尋ねた。
「事実ではない」と私は答えた。