チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年10月14日

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富坂 聰 (とみさか・さとし)

ジャーナリスト

1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。

 第2のゴールデンウィークと呼ばれる国慶節の休み。10月1日から7日までの間には、延べ4億8000万人が旅行に出ると予想され、移動の人数は前年同期に比べて13%も増加した。

高額商品は海外で買いたい

 相変わらずの盛況ぶりだが、今年はその旅行の中身に変化が起きていた。

 「実は、国内旅行が低調だったのです」

 と語るのは、上海の旅行業界の関係者だ。

 「中国国内の観光地として有名な、例えば世界遺産でもある四川省の九寨溝は、昨年に比べ約40%も観光客数が減り、黄山など中国の五大山でも約30%減と落ち込みました。これにつれ各観光施設の入場料収入も対前年比で4.75%減になっています。つまり、ここから分かるのは、中国人の旅行は、いまや国内ではなく、海外に行って楽しむ傾向が顕著になったということです」

 金持ちになれば外に目が向くのも自然なことだが、問題はここに国内をあえて避ける現象が見られることだ。

 「休日に空気のきれいな海外に行きたいという旅行者の傾向は、国内で海南島が人気であることかも察せられますが、理由はそれだけではありません。中国は海外で高級ブランドを買い漁る旅行者の消費行動に、資産流出を警戒し始め、海南島の三亜に巨大なモールを建設していますが、いま一つ振るわないのが現実です。やはり高額商品は海外で買いたいというのが本音なのでしょうね」

 海外でより旺盛な消費を見せるといった傾向は、この国慶節でさらに定着したようなのである。

「ぜい沢禁止令」の弊害

 9月30日付『経済参考報』は〈2013年の統計によれば、ぜいたく品を買っている人々の約73%が海外で消費し、その数字は対前年比で8%の増加だという。これはつまり20%の中国人しか国内でぜいたく品を買っていないということだ〉

 と懸念を伝えている。

 中国経済の未来については国際機関の多くが失速しても底堅いという評価を与えているが、その条件として地方債務問題と不動産問題のソフトランディングを指摘している。加えて経済の構造転換の必要性が強調されるのだが、そのためにカギとなるのが消費である。その中国経済にとって、いま何よりも栄養となる消費が国内を離れ海外に比重を移しているとなれば深刻である。

 いったいなぜなのだろうか。国務院のOBが解説する。

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