中国メディアは何を報じているか

2014年9月18日

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弓野正宏 (ゆみの・まさひろ)

早稲田大学現代中国研究所招聘研究員

1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。

 9月は中国では新学期が始まる時期だ。各地の大学では新入生に対して軍事教練が実施されているが、軍でも新兵の入隊があり、各地でリクルートから兵士の入隊まで一連の動きが大きくメディア報道を賑わせている。そうした中で徴兵を巡る汚職が報道されている。

 中国軍では現在、汚職取締りが大々的に展開されているがそれは「虎退治、ハエ叩き」という高官に対するものだけではない。政府全体で展開される大規模な反腐敗と歩調を合わせ、各レベル、地方部隊でも軍指導部から監督監視グループが派遣されて捜査が展開されている。

自分の子供が兵役に就けるように

 このようなプロセスで新学期の今、クローズアップされているのが徴兵時の贈収賄だ。中国社会は「コネ社会」であり、同郷、血縁、友人関係が重要な役割を果たすが、同時に権力を持たない者が権力を持つ者に取り入って便宜を図ってもらうための贈賄が蔓延している。徴兵時の贈収賄はまさにこうした「職業あっせん」のために学校を卒業する若者の親が地元軍幹部に自分の子供が兵役に就けるよう依頼することから広まったものである。

 中国軍の汚職の実態についてこれまで、高官が土地取引や官職売買で財を成す例として徐才厚元中央軍事委員会副主席や谷俊山総後勤部副部長のケースを紹介してきた(2月13日記事7月29日記事)。そして汚職に限定したものではないが、退役軍人が自分の劣悪な境遇改善を求めて行う異議申し立ての頻発が軍や地方政府にとって頭痛の種になっている事を紹介した(8月12日記事)。

 今回紹介するのは、軍から出る退役軍人のケースとは対照的な、兵士になる入隊する正にその時から贈賄を行って便宜を図ってもらう入口での話である。一つは海外華僑向けのニュースサイト「博訊」網に掲載された「河南での兵士リクルートで汚職が深刻 入隊許可を得るため90%が金を贈る」という記事。そしてもう一つは徴兵時の汚職が深刻なことに軍当局が危機感を強め緊急通達を出したことを受けて掲載された『解放軍報』の「国防部征兵弁公室が要求 兵士リクルートでの不正の風潮と腐敗の問題を断固抑制すること 清廉な兵士リクルートのために巡視で密かに調査」という記事である。

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