企業が求めるのは「基本の充実」
東大では毎年3000人の合格者の中から、「世界のトップ人材になり得る人材100~300人を生み出し、徐々に拡大する」(吉見俊哉・東大副学長)と話し、14年度から東大で初めてとなるエリート教育を開始する。同時に全体的な学生のレベルアップも目指す。早稲田、慶應、京都大、大阪大などもグローバルリーダーになり得る人材を輩出したいという意向が強い。
「教育の平等」を掲げてきた日本ではエリート教育は受け入れられてこなかったが、大学の国際競争の激化に伴い、そういっていられなくなってきた。
ポイントとなるのは、大学側がこれぞ「グローバル人材」として養成した卒業生が、民間側の期待に応えられるかどうかだ。大手企業はかつて新入社員を企業内部の研修によって戦力に仕立て上げてきたが、日々グローバルな戦いを強いられている企業にはその余裕がなくなっている。企業側は即戦力の社員を求めており、技術畑出身の経営者からは「深刻なのは技術系の学生の層が薄く、資質が伴わないことだ。国立大学の入試科目も減ったことで、基本ができていない」という声も聞こえてくる。1990年代にもてはやされた「ゆとり教育」のおかげで、入試科目が減らされた悪影響がここにも出てきている。理科系なのに数学や物理のイロハが分からなくて、一から説明しなければならないといった新入社員がいるという。企業としてはグローバル人材の養成は歓迎するが、大学4年間で基礎的な勉強もきちんとやってくれないと、仮に英語がしゃべれたとしても、グローバル戦線には立てないというわけだ。
国内の4倍以上の台数の乗用車を海外で販売するまでになったホンダの池史彦会長は、大学教育全体について「国際化以前に基本の教育体系を根本から直さないと日本の地盤沈下はますますひどくなると思う。受験勉強は必死にするが、合格すると4年間は単位さえ取れれば勉強せずとも何とかなってしまう日本の高等教育は見直す必要がある」と訴える。
文科省が大学にぶらさげる補助金
文科省は4月から大学の国際競争力アップを眼目に「スーパーグローバルユニバーシティ」(SGU)と銘打った新規プログラムをスタートさせた。世界のランキングトップ100を目指す力のある大学を『トップ型』として10校、これまでの実績を基にグローバル化を得意な分野で牽引できる『グローバル化牽引型』として20校の合計30の大学を選定し、10年間支援する。