【WEDGE創刊25周年特集】英知25人が示す「日本の針路」

2014年11月24日

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変わりゆく日本の演芸。落語界の巨匠が語る「笑い」の哲学とは。

 今は、若手が一生懸命、落語を勉強していますよ。大学を出たヤツだって落語家になっちゃう。

三遊亭圓歌(さんゆうてい・えんか)
1932年東京生まれ。45年二代目円歌に入門。二代目歌奴を経て、70年三代目圓歌襲名。96年落語協会会長。勲四等旭日賞、文部省芸術祭優秀賞など受賞。2006年から落語協会最高顧問。(撮影・松村隆史)

 落語家で最初にメガネをかけて落語をしたのが僕で、着物は黒紋付って決まっていたのを壊したのも僕。お客が「たまには陽気な着物を着て出ろ」って、草が萌えるような明るい色の着物をくれたんです。それが意外とウケちゃって。今の若手にもいますよ。新しい芸をやるヤツ。例えば、懐にてめぇのカメラを入れておいて客席を写すんですよ。ほかに誰もやらねぇから、それだけでバーッてお客が手を叩いて笑う。

 でも、今の人たちはテレビの芸に慣れているでしょ。テレビは尺が短いから、2~3分やるだけの芸が増えている。こういう傾向はこれからも続くんでしょうけど、テレビだと寄席の芸が分からないんですよ。

 僕が若手の頃、誰が寄席で一番笑わせるか仲間と競ったんです。そしたらあるヤツがね、何もしゃべらないで舞台の下手から上手にスーッと横切った。お客は考えるように見ているわけですよ。それで、あぁこれが落語だって分かった瞬間、ダーッて笑った。そういう芸が一番ウケた時代がありました。お客に粋な人が多かったからでしょうね。徳川夢声なんて、東宝名人会でうどんを食うだけでお辞儀して帰っちゃった。今なら張り倒されますよ。

 大阪の人形浄瑠璃文楽もそうだけど、伝統芸能にお金を出してくれなくなっちゃった。でも、国が保護するとかそんな難しい話ではなくて、大衆的な理由ですよ。今の若い人は文楽がどうして語尾を伸ばすか分からない。「表へ出た」で済むところを「おもてのーかたへとー」とやる。それが芸ですよ。落語も寄席も、その時代のお客に合わせていくと変わっていくんでしょうね。でも、25年後も必ずスターが出てきますよ。僕たちとは離れた世界の芸で人気者になっているスターが(談)。

  
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◆Wedge2014年5月号

 

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