WEDGE REPORT

2014年12月8日

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既になくなりつつある定年

 ただ、実際はメッセージもケア21も制度変更前から、65歳以上の高齢者が介護現場で働いていたことから、「実態はあまり変わっていない」(メッセージの岩本隆博執行役員)のが実情である。スーパーやコンビニ、外食なども店単位で採用をしており、会社が定年を決めていても、その年齢を超えて採用しているケースが散見される。つまり、人手不足業界では定年制度そのものが形骸化し、実質なくなりつつあるといえる。

 昨今、高齢者の貧困化が問題となってきている。貧困が進めば、生活保護者が増え、財政への負担が増す。社会保障給付費は年々増え続け、2013年度は約110兆円の支出となった。今後も、高齢化率は上昇し続けるため、社会保障費の支出は頭の痛い問題だが、高齢者が働くことで、税金をもらう側でなく、納める側に回れば、この負担も多少は緩和される。働くことで健康を維持できる人が増えれば、医療費の抑制にも繋がる。

 いわゆる「生産年齢」は15歳以上65歳未満を指すが、これから日本では、生産年齢人口が減少し続ける。65歳以上が実質の「生産年齢」になれば、国の活性化にも寄与するだろう。

 高齢者は生活のために働くことを求め、企業も高齢者を労働力として欲する。こうした動きに目を付け、IT企業のガイアックスは今年4月に、高齢者と企業をマッチングさせるシニアモードを設立。現在200人を超える高齢者と100社を超える企業が同社に登録している。

 「若者の採用が難しくなっている昨今、高齢者を活用しようという動きが広がっており、企業の問い合わせも増えてきました」(千葉孝浩事業開発部長)。もっとも「高齢者には仕事を頼みづらいこともあり、これまで高齢者採用をためらっている会社もあった」そうだが、いよいよこうした企業からも引き合いがあるという。

 定年が消えていくことで懸念されることは、若者の雇用である。高齢者がイスに座り続けると、若者の座るイスがなくなるからだ。しかし、高齢者を欲している業界では、若者にも門戸を開いている。

 また、定年が消えることで「働く気がないのに居座り続ける人材」が発生する恐れがある。この問題について、前出のケア21は「年齢に関係なく、決められた業務ができない場合は指導し、改善してもらう。最悪の場合辞めてもらうことになるが、そもそもそうした深刻なケースは発生していない」と教えてくれた。

 年金の支給年齢引き上げに伴う、定年引き上げの流れは、今後も続いていくものと予想される。そもそも大量の人員を抱える大企業にとっては、「むしろ定年を引き下げて欲しい」というのが本音だが、待遇の良い大企業にぶら下がり続ける社員が多いのが実情だ。「日本には無駄な中間管理職が多すぎる」という指摘もある。

 こうした企業は、むしろ定年を引き下げ、雇用の流動化を図るべきである。そうすれば、人を必要とする業界に人材が回るからだ。大企業で高齢者を雇い続けることは、人手不足企業と異なり「若者の雇用を奪う」ことにも繋がる。

WEDGE12月号では定年制に対する根本的な疑問について触れています。

(撮影・WEDGE)

  
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◆Wedge2014年12月号

 

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