田部康喜のTV読本

2014年12月17日

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田部康喜 (たべ・こうき)

東日本国際大学客員教授

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

 アガサ・クリスティー原作の「名探偵ポワロ」は、英国のテレビ局によってドラマ化され、日本ではNHKが放映を続けてきた。今秋の5回シリーズでついに、25年にわたる歴史に幕を閉じた。名探偵ポワロは、デヴィッド・スーシェがひとりで演じ続けた。

 日本の推理ドラマの代表格である「相棒」はSeason13が進行中で、正月に特別篇を構えていることからシリーズはついに、15年目に突入しようとしている。杉下右京役の水谷豊がデヴィッド・スーシェの年輪を重ねるまでには十分な時間がある。

名優たちが演技を競う名作

 「カーテン~ポワロ最後の事件~」は、ポワロの死が謎解きに大きな役割を果たす。人は人を裁くことができるのだろうか、という宗教的な深い余韻が残る。

 「相棒」Season13は、初回2時間スペシャルの「ファントム・アサシン」(10月15日)で幕を開けた。政府の公安問題を担当する内閣調査室と、警視庁の暗闘が背景となっている。ロシアの協力者が次々と殺される。

 殺害された人物たちの情報が掲載された特殊な用紙を、新宿のゴミ箱から拾ったのはホームレス役の松尾貴史である。

 初期のシリーズの「神隠し」で、松尾はやはりホームレスとして登場し、右京と協力して少女誘拐の疑惑に包まれた神父(細川俊之)を救う。この神父には幼女に悪戯をしたという冤罪にまみれた過去がある。不幸な人生を信仰によって、他者に愛を注ぐことに喜びを見出している。いまは亡き名優の細川が出演したドラマのなかでも、傑作のひとつである。

 「名探偵ポワロ」シリーズもまたそうである。アガサ・クリスティの原作は映画でも幾度も映像化されている。なかでも、「オリエント急行殺人事件」はイングリッド・バーグマンをはじめ、アンソニー・パーキンス、ショーン・コネリーら、世界の名優たちが演技を競った名作である。

 ただ、ラストシーンを映画とテレビドラマのシリーズを比べてみると、ドラマのほうがより宗教的な意味合いが強いのである。ポワロはつねにロザリオを握りしめて、登場人物たちが成し遂げた復仇(ふきゅう・仇討)をなかったことにした、自分の行為に深く沈黙するのである。

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