2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年12月22日

 フィナンシャル・タイムズ紙は、11月23日付社説で、安倍政権が抱える問題点やさらに求められる施策を挙げながらも、安倍首相が追求する施策は、まさに今一層力をいれて実施すべきである、と述べています。

 すなわち、心配なのは、日本政府が焦点を見失うこと、そして、おじけずくことである。そのようなことになれば悲惨である。

 アベノミックスが失敗だったとするのは、時期尚早である。主に円安と輸入価格の上昇のためとはいえ、物価は安定的上昇圏内にある。これは15年ぶりのことである。景気後退というのが直近の状況ではあるが、日本企業は記録的といえるような収益をあげ、雇用率は完全に近い。

 安倍首相にとって不幸なのは、こうした状況がまだ給与の上昇に繋がっていないことである。これは仕方のない部分もある。年一度の交渉では、物価上昇を反映するのが鈍くなるのはやむを得ない。

 とはいうものの、安倍首相がもっと努力できる分野がある。最優先とすべきは家計における二人目の賃金労働者、すなわち主に女性に対する税問題である。また、大企業が賃金を引き上げ、配当を分散するよう、更なる圧力をかけるべきである。大企業は現在2.5兆ドルという莫大な現金を抱えこんでいる。安倍氏は留保利益への課税を検討すべきである。さらに、革新的なアイディアを支援できるベンチャー・キャピタルを支援する政策を採用すべきである。

 景気を浮上させるためには、力をいれる部門を変えなくてはならない。何十年にもわたり、自民党は、消費者より生産者、労働者より大企業を優遇してきた。インフレが定着して、日本企業の代謝を促進させ、安倍氏がしばしば語っている価格・賃金・消費そして生産の上昇という好循環を促進するような、より大胆な政策を施行しなくてはならない。最近のおぼつかなさを横におけば、ここ10年の中でデフレを克服する最高のチャンスがまだある。今こそより一層決意をもって前進すべきであり、ふらつくべきではない、と述べています。

出典:‘Japan setback will not be the end of Abenomics’(Financial Times, November 23, 2014)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/34a76ece-7176-11e4-b178-00144feabdc0.html#axzz3K2gmrT6D

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 社説は、安倍総理を囲む政治経済環境は悪くなっており、それがアベノミクスの実施を難しくしているが、今こそ揺るぐことなくより一層の決意をもって前進すべきである、とアベノミクスを応援しています。


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