日本の漁業は崖っぷち

2015年1月5日

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片野 歩 (かたの・あゆむ)

水産会社 海外担当

東京生まれ。早稲田大学卒。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。1990年より、最前線で北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国として成長を続けているノルウェーには、20年以上、毎年訪問を続け、日本の水産業との違いを目の当たりにしてきた。著書に『魚はどこに消えた?』(ウェッジ)、『日本の水産業は復活できる!』(日本経済新聞出版社)、「ノルウェーの水産資源管理改革」(八田達夫・髙田眞著『日本の農林水産業』<日本経済新聞出版社>所収)。

 これまで、世界と日本の漁業の違いを知っていただくことで、何人の方々から「目からウロコが落ちた」と言っていただいたことでしょうか? 11月には、人気連載漫画の島耕作シリーズ(モーニング・講談社)でも、日本の漁業の問題が取り上げられていました(参考文献:勝川俊雄著『漁業という日本の問題』)。「魚」の話は身近であり、どなたにでも問題点が非常にわかりやすいのが特徴だと思います。

 このコラムでお伝えしたいのは「客観的で正しい情報の提供」です。日本の水産業を取り巻く環境はあまりにも一般に知られていません。世界の中で、日本がどのような状態になってしまっているのかを伝え続けることで、地方創生を含め、良い方向に復活させる手助けができればと考えます。

デンマークの巻網漁船。心臓部の魚探等は日本のメーカーのもの

 前回のコラムの写真の漁船はデンマーク船でしたが、ノルウェーに水揚げしているために、ノルウェー船と思われた方がいたようです。ノルウェーだけでなく、デンマーク、アイスランド、アイルランドなどでも、同様に、厳格な資源管理をもとに巨大な巻き網船が次々に建造されているのです。しかも巨大な船で漁獲しても資源は安定しています。

 ノルウェーでは1969年に北海油田が見つかり、同時期に減船しても漁業者の受け皿があったということを聞いたことがあります。しかし写真のデンマークだけでなく、アイスランド、アイルランドなどでは北海油田の恩恵はほとんどありませんが、漁業はうまくいっていますし、船は大きくなっても、水産資源は安定しています。問題の本質は、資源管理ができているかどうかなのです。

儲からない日本の漁業

 農林水産省が2013年の漁業経営調査結果を発表しました(表参照)。漁船漁業の平均では、個人経営体の漁労所得が201万円と前年比14%減、会社経営体の漁労損失は1,860万円と前年比85%悪化となり、いずれも現行の調査方法を始めた2006年以来、最悪の損益額となっています。個人経営体に対する補助・保証金も41万円と16.8万円から2.4倍に増加しています(みなと新聞より)。この非常に厳しい漁業者の現実こそが、日本の一般的な漁業に対するイメージと重なっていることでしょう。

 果たして他の国々も同様なのでしょうか? 一般の報道では、世界の漁業がどうなっているか、日本の漁業と比較されることはこれまで非常に稀であったために、大きなイメージのずれが生じています。そこで、他国の実情と比較してみたいと思います。

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