重要なのは「水揚げ数量」ではなく「水揚げ金額」
米国商務省がまとめた日本の水産白書に該当する「米国漁業2013」によると、水揚量(養殖除く)は、前年比2.5%増の448万トンと史上3位を記録。水揚高は約55億ドルと2011年の記録を抜いて史上最高になっています。日本とは大分違います。
これには解説が必要です。米国の水揚げ数量は、実際に漁獲できる量より、かなりセーブされています。米国では、ベーリング海・アラスカ湾が主要漁場で、そこから日本にもスケトウダラ(タラコ、チクワの原料)や鍋に使うマダラ、干物に使うホッケを始め多くの水産物が供給されています。
同漁場では、2014年に漁獲して良いと科学者からアドバイスを受けている数量は257万トンでした。しかし、漁獲できる量は全魚種で200万トンまでという決まりがあるため、その範囲内で、魚種ごとに漁獲枠(TAC)を減らして全体のバランスを取っているのです。
同漁場のホッケの資源は一時減少し、現在急回復していますが、総枠が200万トンと決まっているために、漁獲枠に制限がかかります。米国だけでなく、次にご説明するノルウェーも含めて、実際に漁獲できる数量よりも、漁獲枠は実は「かなり」抑えられているのです。日本のようにたくさん獲ろうとしても、魚自体が減ってしまっていて獲れない状況とは全く異なります。
漁業者にとって重要なのは「水揚げ数量」ではなく「水揚げ金額」、「どれだけたくさん獲れたか」ではなくて、「どれだけのお金になったか」が重要です。これが、賢い国が行っている漁業なのです。漁業先進国の漁業者は、TACが減少すれば、単価が上昇し、漁獲が減ってもそれが収入減になるどころか、かえって手取りが多くなることを知っています。日本でも同様の現象は起きていて、2013年のサンマ漁は、2012年よりも水揚量が32%減少しているにもかかわらず、水揚げ金額は逆に36%も増えました(第16回参照)。
どちらが漁業者に取って良いのでしょうか? 肝心なのは水揚げ金額のはずです。また、漁業で成長を続ける国々は、何よりも重要なことは、資源がサステナブル(持続可能)であることだと分かっています。日本のTACのように、もともと実際の漁獲枠より多く、骨抜きにされてしまい機能していないケースと大きく異なります。「大漁!」などと喜ぶ時代は、すでに何十年も前に終わっているのです。日本の資源は減少が続いていますが、今のままの資源管理方法では、米国のように回復するか疑問です。