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2015年1月28日

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小泉悠 (こいずみ・ゆう)

財団法人未来工学研究所客員研究員

1982年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。民間企業を経た後、2008年から未来工学研究所。09年には外務省国際情報統括官組織で専門分析員を兼任。10年、日露青年交流センターの若手研究者等派遣フェローシップによってモスクワの世界経済・国際関係研究所(IMEMO)に留学。専門は、ロシアの軍事・安全保障政策、軍需産業政策など。著書に『ロシア軍は生まれ変われるか』(東洋書店)。ロシアの軍事情報を配信するサイト「World Security Intelligence」(http://wsintell.org/top/)を運営。

 2014年に始まったロシア経済の危機は収まるどころかさらに深刻化している。財政面で言えば、国家歳入のおよそ半分を占める原油の国際価格がロシア政府の想定していた100ドル/バレルを大幅に下回って50ドル/バレル台で推移しているのだから、事態は深刻だ。

 こうした中で、昨年12月、プーチン大統領は年次教書演説の中で連邦予算を毎年5%カットするよう内閣に命じた。すでに保健予算や交通インフラの整備予算などが削減対象となっているが、とばっちりを受けているのが刑務所の運営等を担当する連邦刑執行庁(FSIN)である。

改善策が経済危機で反故に……

(画像:iStock)

 ソ連崩壊後、ロシアでは治安悪化によって刑務所や拘置所への収監者が激増し、過密状態が続いて来た。死刑の廃止に拠って終身刑が増加したことも一因と見られる。

 これが人権問題であるとして内外の非難を浴びたことや(最近ではプーチン大統領への過激な批判パフォーマンスで逮捕された女性バンド「プッシーライオット」のメンバーが人権状況を告発している)、ロシア経済の回復によってある程度の財政的な余裕ができたことなどから改善策の取り組みが始まったばかりだったが、それが経済危機で反故にされそうになっている。

 そこで以下では、ロシアの刑務所問題を追い続けて来たジャーナリスト、コズロフの記事を紹介したい。

「連邦刑執行庁にはスペースが足りない」
『コメルサント』2014年12月2日 ヴャチェスラフ・コズロフ


ロシアの拘置所問題に関する昨日の公共院公聴会で、連邦刑執行庁(FSIN)の代表者は、ロシア連邦の15の地域で状況が危機的な状態にあると認めた。同庁の刑務所・拘置所組織管理局のイーゴリ・ヴェジニャーピン副局長によると、特に深刻なのはクリミア、モスクワ州、モスクワ市である。「クリミアでは、収監者1人あたりの居住スペースが、規定の4平方メートルに対して2.9平方メートルしかない」とヴェジニャーピン氏は言う。モスクワ州内・市内の拘置所ではこれが3平方メートルだ。スモレンスク州では少し状況が良く、収監者1人あたりのスペースは3.4平方メートル。これがサンクトペテルブルグ市、レニングラード州、バシキール州では3.5平方メートルになる。FSIN当局者が認めたところによると、拘置所の過密化の原因は、裁判所による拘置所への収監決定が増加していることである。

FSINによると、現在、728の施設に67万2000人が収監されている。このうち、219カ所の拘置所と、拘置所として使用されている108カ所の流刑地に収監されているのは11万6000人だ。

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