世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年3月26日

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 ワシントンポスト紙は、2月19日付け社説で、タイの軍事政権は、ほとんど成果を上げておらず、シナワット家(タクシン、インラックの一族)の復権をおそれて選挙を捻じ曲げようとしている、と非難し、米国はもっと強い態度で接するべきである、と述べています。

 すなわち、クーデターから9カ月経つが、タイの軍はほとんど見るべき成果を上げていない。経済は停滞し、将軍たちが約束した「国民的和解」はどこにも見られない。何百人もの政治犯が収監され、失脚したインラック首相の刑事裁判が進められている。戒厳令が続き、無許可の集会は違法とされ、自由な表現は損なわれている。近いうちに、軍による死者も出かねない。

 軍はシナワット家の影響除去を企てている。タクシンは、ポピュリスト的政策により田舎の貧しい人々の幅広い支持を得たが、軍指導部を含む伝統的エリートの怒りを買った。タクシンには賢明でない政策もあったが、2006年以来3回起こった政権転覆は、彼の支持を強化しただけだった。タイのアナリストは、今自由選挙が行われれば、インラックあるいは一族の誰かが再び勝利するであろうと考えている。

 プラユットは、それが分かっているので、暫定政権は1年だけとの約束に反し、選挙を延期している。しかし、将軍たちは、クーデター後の軍事援助等を法律で禁じている米国を含む、タイの最も緊密な同盟国との関係回復をうまく行えていない。そこで、プラユットは、2月の東京訪問で、今年末か来年早期に選挙を実施する約束をした。

 軍は、タイの憲法を国民投票なしで書きかえる計画である。軍とその支持者に一定の議席が割り当てられ、政党には厳しい統制が科せられよう。選挙自体が戒厳令下で行われ、政党や候補者の自由な選挙運動は不可能であろう。軍の計画通りに選挙が行われれば、タイの人々を街頭デモや暴力に走らせかねない。それは、米国にとっても受け入れられない。

 タイが民主主義に戻らない限り法律により認められないものの、オバマ政権の来年度予算は、タイへの新たな軍事援助を提案している。しかし、プラユットには、戒厳令の解除をはじめ意味のあるステップをとらなければ、タイの軍は米国との関係を失うことを知らしめるべきである。オバマ政権が行動したがらないのであれば、議会が踏み出すべきである、と述べています。

出典:‘Thailand’s ineffective rule by force’(Washington Post, February 19, 2015)
http://www.washingtonpost.com/opinions/thailands-ineffective-rule-by-force/2015/02/19/0c53b660-b863-11e4-a200-c008a01a6692_story.html

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 この社説は、典型的な米国流の「民主主義原理主義」の見方というべきでしょう。プラユット政権のやり方は民主主義に真っ向から反するという批判です。

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