ウクライナ分割計画はヤヌコヴィチ大統領の失脚前から決定していた?

リーク報道の真相(前篇)


小泉悠 (こいずみ・ゆう)  財団法人未来工学研究所客員研究員

1982年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。民間企業を経た後、2008年から未来工学研究所。09年には外務省国際情報統括官組織で専門分析員を兼任。10年、日露青年交流センターの若手研究者等派遣フェローシップによってモスクワの世界経済・国際関係研究所(IMEMO)に留学。専門は、ロシアの軍事・安全保障政策、軍需産業政策など。著書に『ロシア軍は生まれ変われるか』(東洋書店)。ロシアの軍事情報を配信するサイト「World Security Intelligence」(http://wsintell.org/top/)を運営。

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1年目を迎えたウクライナ危機

 覆面をした謎の武装勢力(もちろんその正体はロシア軍)がウクライナのクリミア半島を突如として占拠してから1年が過ぎた。当時、騒乱が続いていたウクライナの首都キエフでは、2月21日に一度はヤヌコヴィチ政権と反政府勢力との間で大統領選の前倒しなどを中心とする合意が結ばれ、一時は事態が沈静化に向かうとも思われたが、その直後にヤヌコヴィチ大統領が首都キエフから逃亡。これによってキエフには暫定政権が成立した矢先に発生したのがクリミア占拠だった。

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 その後、3月にロシアがクリミア半島の「編入」を宣言し、4月半ばにはウクライナ東部のドンバス(ドネツク州とルガンスク州の総称)での内戦状態が始まる。5月末に実施された大統領選により、ポロシェンコ政権が成立すると再び沈静化が期待されたが、結局は戦闘が再開され、7月には298名もの犠牲を出したマレーシア航空機撃墜事件まで発生した。

 その後、一時的に劣勢に陥っていた親露派武装勢力は、ロシアの軍事援助(そこにはロシア軍本隊の直接介入も含むと思われる)を得て勢力を巻き返し、9月にはついに親露派との直接交渉を認めざるを得なくなったポロシェンコ政権との間で停戦合意が成立した。

 だが、その後も戦闘は続き、特に今年1月以降は全面的な戦闘が再開されつつあったが、2月12日の合意によって前述した9月の停戦合意の遵守が再び確認された。一時は要衝デバリツェヴォを巡って2月合意の崩壊も危惧されたが、ウクライナ側が事実上、デバリツェヴォを放棄したことにより、現在はどうにか停戦の実現に希望が見え始めているという状況である。

暴露されたウクライナ分割計画

 こうした中で、2月24日、ロシアの独立系新聞社『スヴァボードナヤ・ガゼータ(自由新聞)』が衝撃的な記事を掲載して話題をよんだ。ウクライナ東部への介入と同国の分割が、ヤヌコヴィチ政権の崩壊前の2月4日から12日の段階で既にロシア政府に提起されていたという内容だ。

 『スヴァボードナヤ・ガゼータ』紙が入手したリーク情報によれば、この計画には、投資会社「マーシャル・キャピタル」などを設立し、後にロシア最大の通信会社「ロステレコム」総裁を務めたこともあるコンスタンチン・マロフェーエフ氏が深く関わっていたという。

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小泉悠(こいずみ・ゆう)

財団法人未来工学研究所客員研究員

1982年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。民間企業を経た後、2008年から未来工学研究所。09年には外務省国際情報統括官組織で専門分析員を兼任。10年、日露青年交流センターの若手研究者等派遣フェローシップによってモスクワの世界経済・国際関係研究所(IMEMO)に留学。専門は、ロシアの軍事・安全保障政策、軍需産業政策など。著書に『ロシア軍は生まれ変われるか』(東洋書店)。ロシアの軍事情報を配信するサイト「World Security Intelligence」(http://wsintell.org/top/)を運営。

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