チャイナ・ウォッチャーの視点

2015年4月16日

»著者プロフィール
著者
閉じる

小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

中国が開発に成功か
「電磁カタパルト」とは

 発艦重量を上げようとすれば、発艦速度を上げなければならない。この問題を解決するのがカタパルトだ。カタパルトは、艦載機を拘束して高速で移動し、艦載機に発艦可能な速度を与えるものである。

 米海軍の空母は、蒸気カタパルトを装備している。米海軍の空母は原子力を動力としているため、原子炉から十分な蒸気を得ることが出来る。しかし、蒸気タービンを動力とする艦艇では、余分にカタパルト用の蒸気を発生させる必要があるために、蒸気カタパルトを後から装備すると、空母の速力が落ちる可能性もある。

 こうした状況を考慮すれば、ただでさえ本来の出力が出せないであろう「遼寧」は、蒸気カタパルトを装備するとは考えにくい。

 実際、中国が考えているのは、蒸気カタパルトではなさそうである。中国が電磁カタパルトの開発を行っていることは既に知られていたが、100メートルあまりの長さを持つ試験用電磁カタパルトの写真が公開された。

 電磁カタパルトは、原理的にはリニア・モーターカーと同様で、磁場の力で物体を移動させる。蒸気カタパルトのように蒸気用の複雑な配管が必要ではない上、速度のコントロールができ、離陸滑走距離を短縮できる可能性もある。

 また、2015年3月には、中国海軍動力・電気工学専門家の馬偉明少将が、「中国のカタパルト発艦技術には完全に問題がなく、実践もスムーズに進められており、実用化の自信を深めている。中国が把握している技術はすでに米国に遅れておらず、より先進的なほどだ」と述べた。

 電磁カタパルトが装備されれば、中国空母艦載機の作戦半径と搭載弾薬量が大幅に拡大されることになる。現在は米国のみが保有する、半径1000キロメートル以上の空爆可能な作戦範囲を世界中の地域に展開する能力を、中国も保有する可能性があるのだ。

 実は、日本ではあまり認識されていないが、米国が主張する「航行の自由」は軍事的な意味合いが強い。米国は、空母艦載機の作戦半径が陸上の目標をカバーするまで、空母戦闘群を陸岸に近づけなければならない。その位置まで自由に航行できなければならないのだ。

 中国が実際に空母を運用できるようになり、米空母戦闘群の中国への接近を実力で阻止できる自信を持てば、米国とともに「航行の自由」を主張するようになるかもしれない。

関連記事

新着記事

»もっと見る