中国や韓国が、海上自衛隊の「いずも」を、空母だと警戒しているという。「いずも」は、2015年3月25日に就役した、ヘリコプター搭載護衛艦だ。さらに、日本が、「いずも」を護衛艦だと呼称していることを、欺瞞だと非難しているとも聞く。
中国では、「護衛艦」という言葉は、フリゲートの意味で用いられる。その他に、空母、駆逐艦といった区分があり、一般的な海軍艦艇の区分と同様である。一方で、日本の防衛省では、駆逐艦やフリゲートといった区別はしない。簡単に言えば、戦闘艦艇は全て「護衛艦」に分類される。ここには、言葉の用法による誤解もあるかもしれない。
多機能艦「いずも」
各機能は限定的
「いずも」は、基準排水量が19,500トン、14機のヘリコプターを搭載可能で、5機を同時運用できる。個艦防御能力を抑え、ヘリコプター運用能力を集中的に高めているということから言えば、「いずも」はヘリコプター空母だと言える。しかし、実のところ、ヘリコプター空母という言葉に明確な定義はないのだ。
「いずも」は、戦闘機及び爆撃機を運用できず、正規空母ではない。それよりも、一定規模の陸上兵力の輸送及び揚陸支援が可能であることから、強襲揚陸艦の性格に近い。さらに海上自衛隊は、「いずも」に指揮艦としての機能も持たせている。
これが、「いずも」が多機能艦とも呼ばれる所以であるが、同艦の各機能は限定的だ。海兵隊を展開するための米海軍の強襲揚陸艦は、40,000トン以上の大きさである。さらに、艦隊の指揮を執る第7艦隊旗艦ブルー・リッジ等の艦艇は、指揮通信情報機能だけで20,000トン以上の大きさを必要としている。「いずも」は非常に大きな艦であるが、それでも、こうした機能を全て詰め込もうとすれば、とても容量が足りないのだ。
「いずも」は、飛行甲板の耐熱化等、若干の改修を加えれば、F-35戦闘機の運用が可能であると言われる。確かに、垂直離着陸ができるF-35は、「いずも」艦上で飛行作業を行うことはできる。