2014年11月10日、2年半振りとなる日中首脳会談(主席との会談は3年ぶり)が行われた。しかし、この会談をもって日中関係が改善したかのような錯覚を覚えるのは危険でもある。首脳会談の実施は、日中の政治関係が当面の間は改善しないという中国の認識に基づくものでもあるからだ。中国は、日中関係の根本的な改善が見込めないからこそ、首脳会談を実施することによって、中国が必要とする協力や危機回避のための各レベルの対話をできるようにしたのである。
中国も日本との軍事衝突は避けたいし、協力できる部分は協力したい。中国にとって、日中関係は米中関係でもある。日中首脳会談は、そのために日中関係改善の素地を整えるものだ。しかし一方で中国は、歴史認識や領土問題で日本に譲歩できるわけではない。日中関係が改善するかどうかは、これからの日中双方の行動にかかっていると言える。
中国は、現在でも、日本に対して、中国が言う「正しい歴史認識」をし、領土問題の存在を認めるよう圧力をかけ続けている。その最たるものが、人民解放軍を用いた対日牽制のための行動だろう。
中国海軍艦艇が尖閣諸島に接近
12月中旬、それまで尖閣諸島の北方200キロメートル付近の水域に常駐していた中国海軍の艦艇2隻が、突如、ジグザグ航行や方向転換を繰り返しながら、尖閣諸島沿岸から70キロメートルまで近接した。
日本の報道は、複数の中国軍関係者の話として、「党中央海洋権益維持工作指導小組」のメンバーが無線やテレビ電話を使って現場の軍艦や監視船に指示していると述べている。「党中央海洋権益維持工作指導」とは、日本政府が尖閣購入を決めた直後の2012年9月に共産党内に新設された組織で、習近平主席がトップを務める。
一方で、海軍の行動も総参謀部の所管である。もし「党中央海洋権益維持工作指導小組」が直接命令するとすれば、新たな多重指揮系統が問題になるだろう。しかし、基本的にはこの新たな組織が持つのは海洋に関する組織間の調整機能である。
今回の、中国海軍艦艇の尖閣諸島接近は、「政治的必要性から海軍が行ったもの」ではないかと言われる。「政治的必要性」とは、2014年に初めて国の記念日とされた「南京大虐殺記念日」に呼応して行動する必要性のことだ。
当然、中国には、日本政府に対して領土問題の存在を認めるよう圧力をかける意図がある。しかし、なぜ12月なのかを考えたとき、歴史認識の問題を抜きに適当な理由は得られない。また、領土問題と言っても、尖閣問題は、中国では歴史問題に深く関わっている。