チャイナ・ウォッチャーの視点

2015年1月9日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

 さらに、中国の研究者たちに、中国が言う「日本の右傾化、軍国主義化」の意味を問い質すと、議論は常に「安倍首相の歴史認識」に行き着く。日中政治関係は歴史認識問題にその根があると言っても過言ではない。この意味において、日中政治関係が簡単に改善することは難しいのだ。

防空識別圏の監視能力構築を目指す

 しかし、一方で、中国人民解放軍の活動が全て政治的な動機によるものだとは限らない。中国人民解放軍は、習近平主席の「戦える軍隊になれ」という号令の下、軍の本分である交戦能力を向上させる努力を始めている。中でも、党中央の支持を得て2013年末から進められている空軍力増強には注目すべきだ。

 中国は、東シナ海の浙江省南麂列島において、軍事拠点の建設を開始した。南麂列島は、尖閣諸島の北西約300キロメートルに位置する52の島から構成される。軍事施設が建設されているのは、その中で最大の南麂島で、面積は7.64平方キロメートルだ。

 中国の報道によれば、南麂島には既に最先端のレーダーが設置されており、ヘリ・スポットが修復されている。また、早ければ2015年には、南麂島或は近隣の島に、滑走路の建設も開始されるという。

 中国が、現段階で、尖閣諸島獲得のために軍事力行使を意図しているとは考えられないが、軍事力増強を進めていることは事実である。そして、そのことが、特にアジア地域における中国の影響力拡大につながることは間違いない。

 現在、中国にとって焦眉の急は、東シナ海に設定した防空識別圏の監視能力の構築である。日米軍用機の活動に対応する必要があるからだ。最先端のレーダーの設置はこの目的に合致する。

 中国は、防空識別圏における監視能力の低さを自ら暴露してしまっている。2013年11月28日、中国空軍の申進科報道官は、「中国空軍は早期警戒機(KJ-2000)1機とSu-30やJ-11など主力戦闘機数機を出動し、中国の東シナ海防空識別圏でパトロール任務を遂行した」と述べている。

 しかし、通常、戦闘機は防空識別圏のパトロールには使用しない。緊急発進できる態勢を整え、必要に応じてスクランブル対応をとるのが普通である。そのためには、防空識別圏内の目標識別が実施でき、その情報を部隊と共有し、スクランブル発進する能力を有していなければならない。中国にはこうした能力が欠如しているために、戦闘機によるパトロールを実施しなければならないと考えられているのだ。

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