中国民用航空局は、2014年7月20日から8月15日まで、上海など12の空港を発着する航空便を25%減らすよう国内航空会社に求めた。対象になったのは、東シナ海に面する南京、済南両軍区内にある空港が中心である。この発着便削減は、日本では、日米などを想定した軍事演習を控えた措置ではないかと見られている。
実際に中国人民解放軍は、2014年7月から大規模な実弾演習等を開始しており、空港の発着便削減はこの演習の影響を受けているのだ。演習のために民間航空機の運航に影響が出るのは今に始まったことではない。中国の空域は空軍が管理している。地域によって低空域は民間に開放されたが、航空路を飛行する民間の急患輸送機が数日待たされることもあると聞く。しかし、ここまで大規模な規制は聞いたことがない。
3カ月という期間も異例の長さ
演習全体の期間は航空機発着制限の期間をはるかに超え、約3カ月と異例の長さである。また、規模も大きい。中国の国営メディアよると、7月15日以降、総参謀部の計画に従って、南京、瀋陽、広州、北京、成都、済南の6つの軍区から、長距離ロケット、砲兵、防空旅団等、陸軍の10個部隊が、全員全装備で、順次6つの訓練基地に赴き、実弾演習等を実施するという。
しかし、この中国メディアの表現は、一つのシナリオに基づいた応用訓練を報道したものではない。演習参加部隊は、それぞれの訓練基地に展開して、個別に基礎的な訓練を行っていると言っているのだ。シナリオを用いた応用訓練であれば、長くても1カ月程度というのが一般的である。
また、中国のインターネットや報道などで公開されている「陸軍の演習の様子を撮影した」とされる写真の中には、射撃する戦車の砲塔の上やキャノン砲の傍らで、手に持った赤い手旗を上げている姿が写っているものが数枚ある。
これは、日本でも射撃訓練を行う際に見かける光景で、「自分の車両或いは砲が射撃する」ことを周囲に示し、危険を回避するよう注意喚起するための動作である。陸軍の各部隊は、少なくとも、長期にわたる演習期間の初期には、射撃等の個別訓練を、順に行っているのだと言える。