オトナの教養 週末の一冊

2015年5月8日

»著者プロフィール
著者
閉じる

中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

読売新聞東京本社調査研究本部 主任研究員

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。福島支局、立川支局、経済部、政治部、ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスクを経て2014年より現職。著書に『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』『御社の寿命』、(いずれも中央公論新社)など

 ニュースを分かりやすく伝えるにはどうすればよいか。報道にたずさわる一人として、筆者(中村)も日々、考え続けている。現場の記者の時も、デスクの時も、そして現在も、わかりやすい記事を書くことは常に求められているし、自分でもそうありたいと努めている。新聞人として、少しでも多くの人に新聞を読んでもらいたいと思う。だからこそ、いかにわかりやすく読者の印象に残る原稿を書くかは、新聞記者として永遠の課題といえる。

 本書は、情報の受け手の立場から何が必要なのかを教えてくれる作品である。ニュースを分かりやすくするあまり、物事を単純化しすぎると、逆に正確さを欠いてしまうことが往々にして起こりうる。正確さを担保しつつ、分かりやすさを追求することは本当に難しく、そのためには十分な勉強も必要であるし、新聞の場合はしっかりとした文章力が求められる。

 この本は明快なニュース解説で知られる池上彰氏と長年一緒に仕事をし、「週刊こどもニュース」という番組のディレクターだった杉江義浩氏の筆による。杉江氏は池上氏とともに、わかりやすい解説をめざして奮闘し、同番組でそれを形にした。筆者は池上氏の取材や解説のスタイルを全面的に肯定はしないし、考え方を異にする部分も多いが、分かりやすく伝えることに情熱を傾け、努力を惜しまない姿勢については敬意を持っている。筆者は池上氏と個人的な面識はなく、そういう意味では報道に携わる者として一度意見交換をしてみたいなと思う人である。池上氏がお父さん役をつとめていた時代から「週刊こどもニュース」をリアルタイムで見ていたが、ニュース解説のひとつの方法として参考になった。実際私の周囲でも多くの大人がこの番組を見て、ニュースの理解を深めていた。

時間がたってからじわじわと
生活に関わってくるニュース

 本書が指摘したポイントで共感する点がいくつかある。

〈あなたの暮らしとニュースの関係〉
〈なぜスクープを大切にするのか〉
〈ニュースの落とし穴〉
〈これだけ知っていればニュースが楽しくなる〉

 こうした項目での記述である。ニュースは遠いところで起きているように見えても、さほど時間を置かずに自らの生活にも関わってくるという指摘や、スクープの重要性、小さな扱いのニュースにも注目することの大切さなどが紹介されている。さらに中学校の歴史や公民の教科書の知識を持つとニュースの理解も進む、という主張も印象的だ。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る