カンヌ映画祭に登場したシー・シェパード代表
水族館イルカ問題にも便乗

背後にある動物園、水族館潰し


佐々木正明 (ささき・まさあき)  産経新聞社外信部記者

1971年岩手県生まれ。大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)卒業。産経新聞社に入社、神戸総局、横浜総局、大阪本社社会部等を経て2014年10月までモスクワ支局長。著書に『シー・シェパードの正体』(扶桑社新書)、『恐怖の環境テロリスト』(新潮新書)

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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シー・シェパードの首領がカンヌ映画祭のレッドカーペットを歩いた。豪華なドレスで着飾った美しい新妻を引き連れて。ロシア出身のその女性とは滞在先のフランス・パリで出会い、今年2月14日のバレンタインデーに結婚したばかり。

カンヌ映画祭のレッドカーペットを新妻と歩くポール・ワトソン(ポール・ワトソンFace Bookより)

新妻とレッドカーペットに立つ
国際指名手配犯

 64歳のポール・ワトソンは日本や中米コスタリカが出している逮捕状などまったく気にかける素振りも見せず、そして、拘束先のドイツから国外逃亡した行為でインターポール(国際刑事警察機構)が国際指名手配している事実などまるでなかったかのように、堂々と世界のカメラマンたちのフラッシュを浴び、「海洋保護団体シー・シェパード」の存在を世に知らしめた。

 団体が制作に関わった映画祭出展作品の上映に招待されたのだった。「さすがフランス。やることが違う」。ある映画人が言った。「カンヌ映画祭は国際指名手配犯が気軽に出席できる場所なのか」。ある日本人はTwitterでこうつぶやいた。

 反捕鯨国のフランスでは、一部の人々が(もしかしたらほとんどが)、日本の捕鯨やイルカ漁に圧力を加えてきた“貢献者“であるポール・ワトソンを温かく迎え入れている。

 今年3月、日本政府の関係者がフランスに出向き、ワトソンの身柄引き渡しを請求したところ、現地の治安当局者に一笑に付されたのだという。「捕鯨を続けている日本が何を言うか」というフランス人の思いがにじむ。ワトソンはフランス各地で講演活動を続けているが、会場はいつも満員状態。聴衆は「日本の漁師たちは、知性動物に対して残虐な行為を行っている無慈悲な殺し屋だ」と言い放つワトソンの言葉に喝采を送る。

 ゆえに、フランスが世界に誇る映画祭の舞台で、ワトソンが歩いたとしても誰も咎める人はいない。きっと、出席のために費やされたお金が、日本の漁師や捕鯨関係者をいびって儲けた寄付金が元であることに多くの人々が気付いていない。ワトソンと彼の妻は、世界中から招待された俳優や映画監督と同様、フランスではVIP扱いなのである。

 カンヌからインターポールの本部があるリヨンまでわずか450キロ。インターポールの国際指名手配リストに掲載されている巨漢の首領は、人権の国での自由と恋愛を謳歌している。

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「WEDGE REPORT」

著者

佐々木正明(ささき・まさあき)

産経新聞社外信部記者

1971年岩手県生まれ。大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)卒業。産経新聞社に入社、神戸総局、横浜総局、大阪本社社会部等を経て2014年10月までモスクワ支局長。著書に『シー・シェパードの正体』(扶桑社新書)、『恐怖の環境テロリスト』(新潮新書)

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