2024年4月24日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年6月10日

 パシフィック・フォーラムCSISのレンツ、ハイデマン両研究員が、5月8日付Diplomat誌ウェブサイト掲載の論説で、中国は国際法を重視する動きを示しているが、南シナ海の問題では比等が提起した海洋法条約の仲裁裁判への参加を拒んでおり、国際法を単なるガイドラインや外交政策の一手段以上のものとして認めなければならない、と中国に批判的な見解を述べています。

画像:iStock

 すなわち、今年の初め、中国外務省は省内に国際法規委員会を設置した。この委員会は、海外に逃亡した汚職容疑者の引き渡しを実現するのが当面の活動とされているが、中国が国際法に関心を高めることは歓迎すべきことである。国際法規につき専門知識を増やすことは大国であるための必要条件である。

 注視すべき分野のひとつは、海洋法である。最近、南シナ海の領有権に関するフィリピンとベトナムの提訴に関して、仲裁裁判に参加しない権利を行使した。中国は、法的な解決を避け二国間での解決を主張する一方で、南シナ海において着々と埋め立てや施設建設を進めている。

 もし中国が徐々に国際仲裁裁判を受け入れる方向に行くのであれば、前向きなことである。中国南海研究院(南シナ海国家研究所)の呉士存院長は、「専門家が育ってくれば中国も仲裁裁判など国際法規を使って中国の国益を確保していくであろう。しかし、現在の国際法規が機能していないということであれば、中国はこれらの法規を変えていくことを求める」と述べている。かかる発言は国際法規への信頼性を損なうものである。国際法規に基づく問題解決に対する中国のコミットメントが不確かであれば、中国が今後仲裁裁判に参加したとしても、それは現場で既成事実を作り上げるための引き延ばし戦術とみなされるであろう。

 条約に基き南シナ海の紛争を解決するに当たっての障害は、中国の海洋法条約第298条宣言(海洋境界画定の強制解決は受け入れないとの宣言)である。しかも、中国は、この宣言を、1996年の条約批准時ではなく、批准の10年後の2006年に行った。これは条約上認められていることではあるが、中国の法解釈や手続きの一貫性の欠如として周辺国が懸念するところとなっている。そもそも中国は国際法について過度にプラグマティックなアプローチをとってきている。中国の一部学者は岩礁やサンゴ礁も島としての地位を持つと主張している。


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