WEDGE REPORT

2015年6月11日

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 中東の過激派組織イスラム国がイラクに侵攻し、イラク第2の都市、モスルを占領してから10日で1年が経過した。イスラム国の壊滅を目指す米国は有志連合を主導してイラクとシリアで空爆作戦を続けているが、同組織が崩壊する兆しはなく、顧問団450人の増派を余儀なくされた。米戦略の手詰まり感が深まる中、オバマ大統領はイスラム国の指導者の暗殺と拉致という秘密作戦を激化させそうな雲行きだ。

地上部隊の大規模投入を拒否する 
オバマ・ドクトリン

 ブッシュ前政権が始めたアフガニスタンとイラクの2つ戦争を「愚かな戦争」と批判して大統領に上り詰めた現実主義者のオバマ氏は、カネと人命を消費する紛争地帯への大規模な地上軍派遣には応じるつもりはない。大統領は就任以来、2つの戦争からの米軍撤退をしゃにむに推進し、イラクからは2011年に撤退を完了させ、アフガニスタンからも2016年末までに撤退させるという日程を確定させている。

暗殺にも使用される無人機(istock)

 大統領のこの性急な政策がイスラム国の台頭を生んだとも言えるが、地上部隊の大規模投入を拒否する戦略こそが「オバマ・ドクトリン」だ。その眼目は「最小の費用で最大の効果を挙げる」というのに尽きる。とりわけテロとの戦いでは、地上戦闘部隊を派遣する代わりに3つの戦術が柱になっている。第1に、地上戦はあくまでも地元勢力に行わせるということ。第2に、米軍は空爆による支援に徹すること、第3に無人機(ドローン)と特殊部隊による暗殺と拉致作戦の実行、である。

 この第3の秘密作戦の中で、無人機による暗殺作戦はオバマ政権になってから激増。これまでに国際テロ組織のアルカイダの幹部ら3000人以上を殺害し、現在もパキスタンとイエメンで暗殺作戦が続いている。一方の秘密に包まれている海軍のシールズや陸軍のデルタ・フォースなどの特殊部隊の作戦は2011年のアルカイダの指導者オサマ・ビンラディンの暗殺以来、分かっているだけでこれまで10件に及んでいる。

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