食の安全 常識・非常識

2015年6月24日

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松永和紀 (まつなが・わき)

科学ジャーナリスト

1963年生まれ。89年、京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち、フリーの科学ジャーナリストに。主な著書は『踊る「食の安全」 農薬から見える日本の食卓』(家の光協会)、『食の安全と環境 「気分のエコ」にはだまされない』(日本評論社)、『効かない健康食品 危ない天然・自然』(光文社新書)など。『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』(同)で科学ジャーナリスト賞受賞。「第三者委員会報告書格付け委員会」にも加わり、企業の第三者報告書にも目を光らせている。

 アメリカのGRASは、食品に添加する物質についてあらかじめFDAが検討し、「長年の食習慣等から安全だとみなされ、使用が認められる物質」に分類する制度。日本人がイメージする「食品添加物」だけでなく、こしょうなどのスパイス、カモミールなどのハーブ類、乳酸菌などさまざまな食品素材が、GRASとして認められています。

 GRAS分類に入れば、その後の食品への使用は自由。しかし、認められなければ、動物を用いた詳細な毒性評価試験などを行いそのデータをFDAに提出して審査を受け「food additive」としての承認を受け、定められた使用方法に則って使う、というのがアメリカのやり方です。Food additiveとして認められなければ、食品への使用はできません。

 これまで、PHOsはGRASとされてきました。しかし、そのリストから除外する、というのが今回のFDAの決定です。事業者が食品素材として使いたい場合には、新たにFDAに安全性に関する詳細なデータを提出して、food additiveとしての承認を得る必要があります。

 結局、トランス脂肪酸自体を禁止したわけではなく、肉や乳製品等に含まれるトランス脂肪酸、植物油を脱臭精製する時に意図せずできるトランス脂肪酸は、今回の措置の対象外。したがって、アメリカ人のトランス脂肪酸摂取量が今後、ゼロになるわけではありません。しかし、主要摂取源であるPHOsが禁止となれば、トランス脂肪酸の摂取量は大幅に減るでしょう。

冠動脈疾患に苦しむアメリカ

 さて、アメリカはなぜ、PHOs禁止を決めたのでしょうか。それは、アメリカ人の心臓疾患が深刻だからです。年間に約61万人が心臓疾患で死亡し、死因の1位。心臓疾患もさまざまあり、先天性のものや心筋症、心臓弁膜症など器質的な疾患もありますが、37万人は冠動脈疾患、つまり心筋への血液の流れが止まってしまう病気により死亡していると考えられています。

 冠動脈疾患は、高血圧、高コレステロール、喫煙、肥満、糖尿病、問題のある食事等が要因として挙げられており、トランス脂肪酸の摂取量の多さも、問題視されています。

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