南シナ海における
米中衝突の3つシナリオ


世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察するコラム。

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6月6日付のナショナル・インタレスト誌で、若手の安全保障・軍事専門家であるファーレイ米ケンタッキー州立大パターソン外交国際商業スクール准教授が、南シナ海における米中衝突のシナリオを3例提示しています。論旨は、以下の通りです。

画像:iStock

 少なくとも近い将来、米中両国はともに戦争を望まない。中国の軍事力増強に目覚ましいものがあるとはいえ、米国と戦えるという水準には程遠いからである。一方、米国としても、中国との軍事衝突がもたらす混乱を望んでいない。しかし、南シナ海では、中国の埋め立てによって領海に関する主張が拡大し、結果として米国が主張する「航海の自由」が阻害されるという場合、事態が沸騰する可能性が高い。以下3つのシナリオはその例である。

 第1のシナリオは、戦闘機による危険な飛行である。2001年に米海軍の哨戒機と中国空軍のJ-8要撃機が空中衝突するという事件があった。このような場合に、中国の戦闘機が米軍機に対して実際に射撃するようなことになればより深刻である。更に、米空軍機が中国軍機を射撃するような事態に発展すれば、中国における世論は、北京の政府が理性的に統制できる程度を越してしまうであろう。

 第2のシナリオは、中国が南シナ海に防空識別圏(ADIZ)を設定する場合である。米国は中国が東シナ海に設定したADIZを無視してきたが、南シナ海は、中国にとってより重要であり、かつより強力なプレゼンスを維持できる海域であるため、米国が同様に中国のADIZをあえて無視する姿勢をとれば、米中両国の航空機が危険なまでに接近する可能性は極めて高い。

 第3のシナリオは、潜水艦の異常接近である。冷戦間の米ソ両海軍の潜水艦に比較すれば、中国の潜水艦部隊の行動半径は小さく、現段階では深刻な問題として捉えられていないが、将来中国の潜水艦部隊の活動が積極化すれば、その危険は増す。専門家の多くは、米海軍の中国近海への接近を妨害するために、中国の潜水艦部隊が第一列島線を越えて太平洋に進出する可能性を指摘しているが、そうだとすれば、日米両国の潜水艦が中国潜水艦に遭遇する頻度は増大する。潜水艦同士の衝突事故が起きれば、犠牲者の数は航空機の衝突どころではない。

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