世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年7月10日

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 世論の手前、指導者が強硬にならざるを得ないケースは往々にしてあり、それが事態を悪化させる危険は大きい。中国は、南シナ海において文字通り領土を作っており、米国がごく普通のこととして行うことが、不安定化の原因となる軍事介入とみられることがあり得る。

出 典:Robert Farley‘3 Ways China and the U.S. Could Go to War in the South China Sea’(National Interest, June 6, 2015)
http://www.nationalinterest.org/feature/3-ways-china-the-us-could-go-war-the-south-china-sea-13055

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 上記に対して、主に3点コメントしたいと思います。

 第1点は、これらのシナリオ、すなわち、航空機の衝突、ADIZを巡る航空機近接の頻度増大、潜水艦の異常接近というケースはそれぞれに先例もあり、蓋然性も高いということです。冷戦期の米ソに比較すると、偶発的な事件を防止し、あるいはエスカレーションを抑制するための信頼醸成措置が整備されていないという点に着目すれば、むしろ危険性が高いといえます。この地域における信頼醸成措置の整備、たとえば海上危機管理メカニズムの構築が急がれるゆえんです。

 第2点は、ファーレイが米中ともに戦争を望まないと指摘する際に、「少なくとも近い将来」という前提を設けていることに留意しなければならないということです。アメリカにとって米中衝突によるアジアの不安定は望ましくないというスタンスは、長期的にも真実だと思える一方、中国側が米中衝突を望まない理由は、軍事的能力が現段階で米国にかなわないということであり、10年後あるいは20年後を考えると、事情が変化し得るという危険があります。どうすればその頃の中国に米国との戦争を思いとどまらせることができるのか、という点は今考えておかなければなりません。

 第3点は、アメリカにとって「航行の自由」という原則は、我々が思う以上に重要だということです。中国は南シナ海の問題を核心的利益と標榜したことがありますが、アメリカにとって「航行の自由」はこれ以上の意味を持っている可能性があります。

  
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