オトナの教養 週末の一冊

2015年9月2日

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中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

ジャーナリスト

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスク、調査研究本部主任研究員などを経て2017年4月より読売新聞東京本社メディア局編集部次長。『御社の寿命』、『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』、(いずれも中央公論新社)など

 1985年頃に青春期を送った人で、洋楽に興味のあった人なら「ウィ・アー・ザ・ワールド」は強く記憶に残っている楽曲だろう。筆者(中村)はタイトルの「呪い」という言葉に吸い寄せられて手にした。ここで「呪い」の中身を明かしてしまう訳にはいかないので、ぜひ書店などで実際に手にとって読んでいただきたいが、タイトルにあるように本書は「ウィ・アー・ザ・ワールド」という曲についての研究に多くの紙幅を割いている。同時に、全体を通読するとわかるが、アメリカン・ポップスの歴史を克明に解説する本でもある。イギリスのそれとは違う音楽的成長をアメリカで遂げてきたことがよくわかる。そうした歴史をたどりながら、この曲の持つ意味が分析され、深みのある解説が加えられている。

 ◆大ヒット曲〈ロック・アラウンド・ザ・クロック〉でロックンロールの歴史が始まったといわれてから、今年で60年の歳月が過ぎています。そのロックンロール誕生以降の、ポップ・ミュージック史のちょうど中間地点に存在するのが〈ウィ・アー・ザ・ワールド〉。白人と黒人が手をとり、アフリカの飢餓を救うために立ち上がったアメリカン・ポップスの金字塔。◆

 著者の指摘するように、まさに1985年というのはそういう年にあたっていることを、本書を読んで再認識した。そして今年、そこからちょうど30年が経過した。まさに1985年というタイミングがアメリカン・ポップスの「中間地点」であったことは非常に示唆的である。アメリカに根強く残っていた人種間の壁や偏見を乗り越えて到達した一つの大きなポイントであり、「アメリカン・ポップスの金字塔」と著者が表現するのは決して大げさではないと思う。

 本書を読みながら、あらためて動画サイトで「ウィ・アー・ザ・ワールド」を見てみた。そしてあわせて、前年に、イギリス・アイルランドの歌手たちが集まって結成した「バンド・エイド」の「Do They Know It's Christmas?」とも見比べてみた。いずれもずいぶん久しぶりに見る映像だったが、多くの気付いた点があった。

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