2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年9月11日

 そして、東シナ海における中国の石油・ガス開発施設は、新たな海洋紛争を引き起こし得る。中国が今の活動を停止する可能性は低いが、対抗して日本が中間線の日本側で資源掘削を始めれば、関係は急速に悪化しよう。日中双方に、各々の施設を守るべく、軍と沿岸警備隊の展開を強いることになり、空海でのイタチごっこを尖閣周辺からさらに北方に拡大させる。

 これらは全て、地域の安全保障にとり良い兆候ではなく、米国も巻き込まれかねない。いずれかのシナリオが起これば、米国には大変な難問がつきつけられることになる。小さな無人島を守るために軍事的アセットを用い、中国との大規模戦争の危険を冒す用意があるのか。それとも、中国との紛争を避けるために、日本との同盟を犠牲にして、世界中への米国のコミットメントに対する疑念を招く用意があるのか。この問題への容易な答えは無いが、東シナ海での展開には注意を要するという重要な点が浮き彫りになっている、と論じています。

出典:Jeffrey W. Hornung,‘Get Ready: China-Japan Tensions Set to Flare over East China Sea’(National Interest, August 12, 2015)
http://www.nationalinterest.org/feature/get-ready-china-japan-tensions-set-flare-over-east-china-sea-13557

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 中国の戦略は、論説が指摘する、1)2機の多目的ヘリを艦載できる大型沿岸警備艇の造船への着手、2)尖閣の近辺の温州市とNanji島に基地を作る計画、3)東シナ海での沖合の石油とガスの開発、の諸措置により、日本に圧力を加え、日本の対抗意識を削ぐことにあると思われます。中国がこれだけの措置を取り、日本が沿岸警備を一層強化するなど対策を講じれば、緊張は当然高まります。ただ、米国は再三尖閣には日米安保が適用されると述べており、中国は米軍の介入を招くような軍事行動を取ることは考えにくいでしょう。そのような明らかな軍事行動に至らない程度の挑発行動により、日本の反応を探り、日本が少しでも躊躇するようなことがあれば、既成事実を広げることに努めることになると思われます。

 日本は尖閣については一歩も譲らない姿勢を堅持し、沿岸警備体制の強化に努めています。日本国内には、日本が毅然とした態度を示せば、緊張が高まるとの批判が出る可能性はありますが、そもそも緊張を高めているのは中国であり、それに対応することは、何ら批判されるべきことではありません。

 日本政府は、中国が東シナ海で行っている、または行おうとしていることを、国内外で周知徹底させ、中国が緊張を高めていることに対する内外の理解の増進と啓発に努めるべきでしょう。

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