2024年12月27日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年9月11日

 米アジア太平洋安全保障研究センターのジェフリー・ホーナン准教授が、National Interest誌ウェブサイトに8月12日付で掲載された論説にて、中国の最近の行動により、東シナ海における日中間の緊張が高まり得る、と警告しています。

画像:iStock

 すなわち、尖閣をめぐる日中間の対立は目新しいものではないが、以下の三つの出来事により、緊張が強化され得る。

 第一は、中国による大型沿岸警備艇の造船である。2013年の海警の設立以来、沿岸警備艇は、中国の海洋への主張を追求するためのカギとなっており、多くの新しい船を就役させている。特に重要なのは、2隻の世界最大の総排水量1万トンに達する高耐久性巡視艇で、これらは火器を搭載でき、2機の多目的ヘリを艦載できる。1隻目は中国海警2901として完成し、2隻目は最終工程にある。

 第二は、中国が尖閣の近辺に2つの基地を作る計画であると報じられていることである。中国海警は、島への巡視能力を高めるべく温州市に基地を建設することを検討しており、同基地は、航空機・ヘリの巨大な格納庫、訓練施設、海警2901を含む6隻の船を係留できる桟橋を備えるとのことである。さらに、中国軍は尖閣から300キロのNanji島に大規模な基地を作ろうとしている、と報じられている。

 第三に、現在東シナ海において、16基の中国の施設が、沖合の石油とガスの開発に従事している。12基は、2012年以降に作られている。2008年に日中は東シナ海での資源の共同開発に合意したが、掘削リグ設置は中国の一方的な行為を示しているとして、日本は抗議している。中国側は、これらの施設は日本が主張する中間線より中国側にある、と言うが、日本側は、中国が日本のEEZ下の資源にまで手を伸ばしているのではないかと日本は懸念している。

 これらの三つの出来事は、二国間の力学を変化させ得る。新しい巡視艇は、中国海警を強化し、沖合での「権利保護」活動、小さな船舶の排除を可能にさせる。さらに、巡視艇の武装は、海警が他の船に攻撃的行動をとる用意があることを示唆する。これは、日本の海保を苦境に立たせる。海警2901の挑戦を受け海保の艦艇が退却すれば、日本にとり悪い前例となり、断固たる対応をすれば、同盟上の義務を通じて米国を紛争に巻き込み得る。

 新しい基地は、中国の尖閣に対する偵察能力を強化する。二つの基地は、沖縄に駐留している米日の軍よりも尖閣に近い。中国は、軍と沿岸警備隊を日本の実効支配を試せる位置に置こうとしている。日本が中国のプレゼンス増大に対抗すれば、偶発的衝突や摩擦の危険は高まる。日本が現在の水準で活動を続けるならば、中国に後れをとり、尖閣への実効支配が危うくなりかねない。


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