エコノミスト誌5月2-8日号は、中国が領有権主張に学問的支えも与えようと米国にシンクタンクを開設し、自分たちの主張の正しさのみならず、東アジアにおける中国の支配的役割という考えを周辺諸国に受け入れさせようとしている、との記事を掲載しています。
中国は昨年11月、米ヴァージニア州アーリントンにシンクタンク、Institute for China-America Studiesを開設、4月に開かれた会議には、キッシンジャーがビデオ・スピーチを寄せ、駐米中国大使も出席した。
しかし、領有権の主張に学問的箔をつけようとしても、米国や東南アジア諸国は納得しないだろう。中国による南シナ海の岩礁での建設ラッシュは、同じく領有権を主張する周辺諸国に強い不安を引き起こしている。
領有権主張のための埋め立てや建設自体は他の国もやってきたことだが、中国のペースと規模は突出している。IHSジェーン発行の衛星写真は、中国が軍用にもなる施設を建設していることを示しており、滑走路を建設中のファイアリー・クロス礁などは、南沙諸島の最大の島の3倍にまで拡大している。
中国は、米国のアジアへの軸足移動が現実化するリスクも含め、自らの行動がもたらす結果を受け入れる覚悟はあるようである。米国は昨年フィリピンと防衛協力の強化で合意、日本とは新たな防衛合意書に調印、かつての敵、ベトナムとも軍事的絆を築きつつある。
こうした米国の動きに、中国の国営メディアは強い言葉で反応し、国内のオンライン・ナショナリストたちの支持を得たが、新シンクタンクは、米国等に向けて中国の主張に説得性を持たせるために設けられた。また、昨年9月には南京大学の南シナ海研究センターが初めて博士課程の学生を採ったが、彼らに期待されているのは、中国の主張を裏付けるような文書を保管記録の中から探し出すことだろう。それによって、人々が中国の言い分を「ただ聞くのではなく、正しく聞くよう効果的に語れるようになる」というわけだ。
しかしそれは容易ではないだろう。中国の学者が直面する問題の一つは、中国軍の秘密主義の行動だ。南シナ海での埋め立てが明るみに出たのは、外国の衛星写真のおかげであり、新シンクタンクのHong Nong所長も南沙諸島での急激な建設には「驚かされた」と認めている。同女史は、周辺諸国の懸念は理解できる、中国はもっと話をし、透明性を持つことで、周辺諸国を安心させなければならない、と言っている。